スロバキア中央部の街スピシュスカー・ノバー・ベスで、窃盗による容疑で男が逮捕された。既に前科のあった男は裁判における減刑を謀るため、逮捕直後から裁判までの約8ヶ月もの間、犯罪歴のない自分の弟に成りすまし過ごしていた。
逮捕されたこの男Viktor.Pは、既にいくつかの犯罪を繰り返した前科持ちであったため、今回の裁判では重い刑が科されることは誰の目から見ても明らかであった。そこでそれを逃れるために男が思いついたのは、犯罪歴の全くない自分の弟であるPeterさんに成りすますことだった。
昨年10月の逮捕から先月の裁判時まで、男は自分をPeterさんだと偽り続けていたが、兄弟なだけに個人情報なども知っているであろうから、偽るのは比較的容易だったのではないだろうか。実際、この成りすましには警察官どころか裁判官までがすっかり騙されてしまっていたという。同じ兄弟でも全く犯罪とは無縁であるPeterさんのおかげで、男は非常に軽い刑を受ける判決を受けたのみで済んだ。
だがその後、Peterさんの住民証に添付されていた写真の顔がViktorと若干違うことが明らかとなり、彼に対するDNA検査が逮捕後初めて行われた。その結果、ViktorのDNAがPeterさんのものと違うことが発覚、そこから成りすましの全貌が明らかとなった。ViktorがPeterさんに成りすましていた際の判決は当然取り消され、裁判は後日改めて行われる。
今回の事件は、裁判時の迅速な手続きが強化されていた時期に発生したものであった。つまり、ろくに男の身元が調査されずにいたということである。だが裁判の際はスピード以上に正確性の方を重視すべきではないだろうか。男も男だが、スロバキア警察や裁判所のぞんざいな仕事ぶりには呆れるばかりである。
しかし最も気の毒なのは、やっかいな兄弟を持ち勝手に自分の名前を使われてしまったPeterさんであろう。この事件が彼のその後の人生に悪影響を与えないよう、祈るばかりである。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)