これから春休みになり、被災地に行って何かボランティア活動がしたい、と思う方も多いだろう。だが少し待って欲しい。残念ながら、何かをしたい、助けたいという気持ちが先走りすぎると周囲が見えなくなり、かえって状況を混乱させたり迷惑をかけてしまう例は枚挙にいとまがない。同様の事態は日本の避難所だけではなく、海の向こうでも残念ながら発生している。
「常に冷静になって自分と周囲の状況を確認しないと、貢献するどころか混乱を引き起こしてしまうんですよね」
と、ヨーロッパのある国で通訳として働いている日本人女性Aさんが、阪神・淡路大震災の際に経験した話を教えてくれた。
日本で震災が発生した数日後、Aさんのもとに地元の警察から「日本語の通訳をして欲しい」という依頼が入った。普段滅多にない警察からの依頼に何だろうと思いながら行くと、20歳前後の女性が2人捕まえられていた。
日本からやって来た彼女らは、街の中心地で阪神・淡路大震災の被災者への募金活動をしていたという。
だがその国では、そうした活動をするには役所の許可が必要なのだが、女性らはそれを全く知らず、しかるべき許可を取らずに活動していたのだ。更に2人とも英語すら全く話せず、従って警察に質問された際、自分達が何をしていたか全く説明ができなかった。
これでは警察にその活動を不審に思われたのも無理はない。結局彼女らは、身元確認、そして許可を取得しているかなどを確認されるため、3日ほど警察に拘束されることになってしまった。Aさんは、取り調べの際の通訳として呼ばれたのだった。
結局彼女らのこの行動は詐欺などではなく本心からであったことが明らかとなり、無事保釈されたのだが、これについてAさんは、
「2人の気持ちは分かるんです。でもそれが先走って、その土地の言葉もできない、規則も知らないままむやみに活動すると、こうした騒動になって、せっかくの行為もネガティブなものとなってしまう」
と話している。
残念ながら、この例のように状況を把握せずに行動してしまい、思いが空回りとなってしまった話は他にも多い。
何か助けになりたいと思う気持ちは、本当に素晴らしいものである。どうぞその気持ちを空回りさせることなく、地に足をつけ、状況を判断し、できることから少しずつ始めていって欲しい。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)