卓抜したユーモアのセンスで舞台や映画をはじめ数々の作品を世に送りだしてきた脚本家、三谷幸喜。2011年の秋には映画監督として5作目となる『ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON』が公開される予定だ。
『ザ・マジックアワー』に代表されるように三谷の作品には練りに練られた巧みな“笑い”がそこかしこに織りこまれている。彼の“笑い”はいったいどうやって生み出されていくのだろう?
俳優、近藤芳正が12月20日放送の「ライオンのごきげんよう」で三谷にしかけられたとあるドッキリについて語った。
かつて三谷の主宰する劇団“東京サンシャインボーイズ”に客演として出演していた近藤はある日、ファミレスを舞台にした演劇をみるために劇場へ赴いた。そこで三谷幸喜直々に開場から開演までの30分間でおこなうちょっとした寸劇にでてくれるように頼まれ、近藤はこれを快諾。「ファミレスでなかなか席に通してもらえない客」という役を割りあてられた。
事前の打ちあわせでは、約束の30分がすぎると、BGMが大きくなり暗転するので、それを合図に近藤は舞台袖に“はける”はずであった。
しかし、まもなく開演となっても、音楽が大きくなりはしたが、暗転はしない。あろうことか、その日の舞台に出演する役者たちが次々に登場して舞台がはじまってしまった。困惑する近藤のもとにウエイター役の役者がやってきて、紙をみせられた。そこには三谷からのメッセージがあり『近藤さん、あなたは騙された』『全てウエイターの指示に従え』と書かれていた。
その後、チャンスをうかがって舞台から逃げようとするも裏方スタッフに舞台に戻されてしまい、結局、カーテンコールまでずっと「ファミレスでなかなか席に通してもらえない客」の役のまま、舞台に出演しきってしまったのである。
その話をきいているほうは、とっても面白い。しかし実際に何の打ち合わせもなく舞台の隅っこにいた当の本人は、そのエピソードを語りながら冷や汗をたらさんばかりの様子であった。リスクがあるけれども“面白い”ことを素直に実行してしまう悪戯心、これが三谷のユーモアの源泉なのかもしれない。
2011年公開の映画も、きっとステキな作品に仕上がっていることだろう。
(TechinsightJapan編集部 KAZUKI)