56歳のフランス人男性がこの日曜日、640回分のマラソンに値する27011.88kmを無事完走し、パリの国立競技場にヨーロッパ諸国の国旗を手にゴールした。それは1年がかりのヨーロッパ大陸横断だった。
1994年公開され当時話題になったトム・ハンクス主演映画「フォレスト・ガンプ」を皆さんは覚えているだろうか。何往復もアメリカ横断を繰り返すフォレスト。その姿を見て、大勢の人々が後を追うように走り始める。そして、いつしか彼は「平和を願って走る男」と名づけられた…。そのフォレストに負けないぐらい走ることに夢中な人がフランスにいた。
彼の名前はセルジュ・ジラール。ヨーロッパ大陸横断を目標に掲げ1日も休むことなく365日走り続けた。その距離は27011.88km。25カ国の国境を足で通過し、1日の平均走行距離は74kmというから、両手足がないハンディを乗り越えてイギリス海峡を泳いで横断した男性に次いで、フランス人で人間の体力の限界に挑戦した人物と言える。
その道程は決して楽ではなかったという。3回ほど、自分の無謀なチャレンジを投げ出したい気持ちになったことがあったと彼は振り返る。そういう時は必ず健康に大きな問題があったそうだ。スペインでの激しい腹痛、ギリシャでできた足の裏の血豆、スウェーデンで痛めたアキレス腱。彼はその度に身体と精神の深い結びつきを思い知らされることとなった。また、走っていて何度かストレスが溜まったのは、ギリシャとルーマニアで数匹の野良犬に吠え立てられ追いかけられた時だったと言う。しかし、持ち前のエネルギーと精神力でそんな困難を乗り越えた。
さらに、キャンピングカーで彼を追い続け応援した妻や友達と、比較的穏やかな関係を保ち続けたことも成功の要因だった。だが彼曰く、時にはそんなスタッフが補給所を間違えて、1日の最後に何kmかを余計に走らされることがあり、そういう時はちょっと頭に来たが、今となっては良い思い出だと笑う。
そして、気になる640回分のマラソンに使用したジョギングシューズの数は27足ということである。「そんなボロボロになったシューズ達に愛着があるというわけではないけど、ヨーロッパ横断の記念に全て大切に保管するよ」と彼はクールにメディアに応えた。
1年間で太ももは10cm細くなり、177cmの身長に対して体重は52kgまで落ちた。体力もかなり消耗した。しかし40歳で保険会社の経営コンサルタントを辞めて、第2の人生をアメリカ大陸横断でスタートした彼の夢はこれで終わりではない。「自分はまだいくつかやりたいことがあるんだ。自分はチャレンジの男。走る目的を一言で言えば、世界を自分の目で見る喜びなんだ」と目を輝かせて彼は語る。
日本でマラソンと言えば、現在マラソンとヨットでの世界一周にチャレンジ中のタレント間寛平である。彼はスタートしてから既に670日以上、36000km走行している。途中、前立腺がん発覚など苦難が生じたが、途中で諦めることなく走り続け、目標達成までとうとう残り約4100kmとなっている。このセルジュさんのゴール達成が間寛平の耳に届き、さらなる勇気と力を与えてくれることを願わずにはいられない。
(TechinsightJapan編集部 福山葉月)