空港で元気よく手を振りながらキャビンアテンダントに連れられ、飛行機に乗っていく子供。そんな我が子を心配そうに見守る親。こんな光景を遠目に眺めたことがある人もいるだろう。この度、エールフランスが子供の一人旅に新しいルールを作り、国民の波紋を呼んでいる。
学校が長い休みに入ると、子供が親元を離れて、祖父母の家に遊びに行ったりする光景は万国共通である。それに加えて離婚率の高いフランスでは、ヴァカンス中、父の家と母の家を半々で過ごす子供が比較的多く、彼らは幼くして環境の変化に適応し、旅の達人となっていく。
かわいい子供を送り出す多忙な大人の立場としては、近距離なら車での送り迎えで何の問題もないのだが、片道2時間以上だったら、便利な公共の乗り物に頼りたいところが本音だろう。ただこの場合、コスト制限のため自分は同伴できない。心配な気持ちは山々だが、添乗員に頼んでお任せして、あとは我が子が無事に到着しますようにと祈るしかないのが現実である。
そんな親の気持ちを酌んでか、大手航空会社エールフランスが、新しい規則を施行した。それによると、小児性愛者から子供を守る目的で、一人旅の子供の隣席は大人以外の客ということを義務づけるものである。しかし大人以外の客ということは、子供客もしくは空席にするということだろうか。果たしてそれは可能なのだろうか。
例に洩れずフランスでも、未成年者への犯罪や誘拐が後を絶たない。実際、エールフランスは今回の決定は、アメリカ行きの飛行機内で体を触られるなどの被害を受けた子供の家族からの告訴がきっかけになったと伝えている。確かに犯罪者から子供を守る目的という点に限れば、今回の施行は画期的だと言える。
しかし、その一方で大きな問題点も抱えている。それは万が一、飛行中事故が発生し、酸素マスクをつけるなどの非常事態が起きた場合に、一体誰が一人旅の子供を手助けするのかということだ。そのような1分1秒を争う緊急時においてはキャビンアテンダントはとても忙しく、不安がる子供につきっきりでいることは困難に違いない。しかも子供は非現実的な状況のためにパニックになるかもしれない。この問題点に対して明確な答えがない限り、記者は我が子を1人で飛行機に乗せたいと思うことはないのである。
(TechinsightJapan編集部 福山葉月)