罪の重さと命の尊さをわかっていない若者が、悪意を持たずに「日常」の感覚で強盗や殺人を犯すことをよく耳にするようになった現代。フランスで、その典型とも言える事件が起こった。
9月10日、ローヌ県の小さな郵便局に2人の若者がやってきた。サングラスと帽子で少し隠れていたが、認識できるほど彼らの顔はしっかり見えた。持参したピストルで局員を脅し、数百ユーロを受け取った彼らは、何事もなかったかのようにタクシーに乗って逃走したのである。
実は犯人達は郵便局に来る時にもそのタクシーを利用しており、車中では共犯者1人が、強盗の「仕事」が終わるのを、何も知らないタクシーの運転手と一緒に待っていたというのである。彼は運転手に「友達がお金を下ろしている」と平然と言っていて、運転手はそれを信じて疑わなかったという。
その後、目撃者の証言から、犯人達の顔が公表され、先週火曜日、ショッピングセンターの通報により、3人のうち、20歳と22歳の2人がセンター内で買い物中に逮捕された。残りの1人は現在逃走中だという。罪を犯して顔が公表されているにも関わらず、平然と公共の場に姿を現したことからも、彼らが強盗を悪行とは思っていないことがわかる。
現代のフランスにおいて、このような若者が引き起こす犯罪増加の背景には、いくつかの要因があると言われている。まずは、経済危機による雇用環境の悪化や所得格差の大幅な拡大、若者の高い失業率などがそれである。それに加えて、フランスの教育では、道徳という科目はないに等しい。「やっていいこととやってはいけないこと」を教わる機会が学校にはないのである。そのため家庭で善悪の区別を教わらない子供達が、社会意識に欠けたまま大人になって罪を犯してしまうのである。フランスの教育に勉強以外の「心」を学ぶ授業を取り入れることが、若者の犯罪率を低下させる得策ではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 福山葉月)