韓国の俳優で歌手のパク・ヨンハ(32)が6月30日に自殺して多くのファンが悲しみにくれた。彼の自殺した動機については様々な憶測がなされるが、韓国の関係者の情報をもとに考えると違う側面も分かってきた。
パク・ヨンハが自殺した理由については日本で耳にする憶測は次のようなモノが多い。『父が末期のガンで彼が看病しており精神的に弱っていた』、『事務所を離れて独立したが仕事が減っていた』、『長年共にやってきたマネージャーと別れ、しかも彼が横領して裏切っていた』という背景が彼を追い込んだのではないかという内容だ。
8月10日に放送された「カスペ!『芸能界の告白』」では韓国に渡りパク・ヨンハの友人や芸能記者らに取材を敢行しており、現地ならではの情報を得ることに成功している。
それを参考にしてパク・ヨンハがなぜ自殺という道を選んだのかを考えてみたい。
まず、前述の理由の他に考えられる原因に『ネットで誹謗中傷を受けていた』ことがあげられる。イ・インギョン記者(スポーツ朝鮮総合芸能ニュースチーム記者)によると、韓国はネット大国と呼ばれる反面で芸能人のミスを徹底的にネット上で誹謗中傷するというのだ。
その内容は「発言で口を滑らせて不穏当なことを言った」、「兵役を逃れた」というものも誹謗中傷の対象となる。実はパク・ヨンハも2006年に、徴兵の通知を受けたが眼の水晶体の異常がひどく、免除されている。この時にヨンハのサイトには数百件もの悪質なメールが届いた。
それは「韓流スターで稼ぐためにわざとやったんじゃないか」や「そんな人とは知らなかった。失望した」などの内容だった。しかし、彼はそれらに対して1つずつ誤解を解くために返信していたのである。
こうしたネットでの誹謗が原因とされる韓国芸能人の自殺は毎年のように起きており、分かっているだけでも2005年から2010年までに9人が自殺している。
それほどに芸能人に対して精神的な苦痛を与えるのである。パク・ヨンハがこの時の事を心のどこかで悩んでいたとも考えられるのだ。
そして次の理由は『韓流スターとしての成功に悩んでいた』ことだ。パク・ヨンハの人気が出たのは「冬のソナタ」での出演がきっかけとなる日本の“韓流ブーム”によるものだ。以降、彼は歌手としても人気を得て活躍することになる。
しかし韓国で『韓流スター』と呼ぶ時は「国内ではなく外国で活躍している韓国人スター」を指しパク・ヨンハは韓国では『なぜ人気があるのか、不思議に思う』者もいる状況なのだ。
同番組で入手したパク・ヨンハへのインタビュービデオでは彼がこうした事に関して悩んでいたことが本音で語られている。
その中には「芸能人は人気がある時は熱いが、少しでも休むととたんに冷める。まるで溶鉱炉のようなものだ」といった芸能人の人気の浮き沈みの激しさに悩む内容の話もあった。
また「海外(日本)での活動はとてもプラスになったが、本当は韓国で活動したい事を考えると不安だ」ということも話している。このまま日本で”韓流スター”として活躍しているうちに「韓国のファンから忘れられるのでは」と恐れていたのだ。
パク・ヨンハが自殺する4日前には、彼は日本で公演を行っていたのである。『コンサート・ツアー2010』で来日していたパク・ヨンハは6月26日に埼玉県川口市の川口総合文化センター『リリア』で公演しており、全部で全国14ヶ所・18公演が予定されていた。しかし、彼は27日に突然公演を中止して帰国したのだ。
帰国後の彼は友人によるとむしろ明るかったという。28日には俳優のソ・ジソプに電話して、友人の誕生パーティーを開く計画などを話した。また翌29日にはアメリカでレコーディング中の東方神起のジェジュンに電話している。ジェジュンによるとヨンハは「焼酎を一緒にのみに行こう」と明るく話したという。
同じく29日の午後7時からヨンハは音楽プロデューサーに会い、その後、午後9時からはレストランを経営する友人と打ち合わせをした。この時ヨンハは、日本人観光客のためのレストランをソウルに開業する計画を話したという。
打ち合わせが終わったのが深夜12時を過ぎており、その後ヨンハは帰宅した。
6月30日である。パク・ヨンハはマネージャーに「飲酒運転するなよ」とメールを送ったが、レストラン経営の友人が1時にメールした時は返信しなかったという。そして早朝5時30分に母親が彼を発見した。
パク・ヨンハのインタビューや韓国記者の話から考えると、彼は韓国で俳優として活動したかったが、現実は韓流スターとして日本での活躍が主だった。そのギャップに悩んでいたようだ。折りしも日本でのツアー中にそれが極限に達して急遽帰国したのかもしれない。そして、帰国後も父の容体などの背景が積み重なり、自ら命を絶つという道を選んでしまったのではないだろうか。
余談ながらパク・ヨンハが日本の音楽バラエティ番組「HEY! HEY! HEY! 」に出演した時に、司会の松本人志が「僕。イボ痔やねん」と言ったをの聞いてパク・ヨンハが「ボクもイボ痔がでることがあります」と口にしたことがある。すぐに浜田雅功から「そんなことまで言わんでエエ」と叱られていたが、そのやりとりから彼が全く飾らずにピュアな性格であることが伝わってきたのを思い出す。
いまさらながらに、そんなピュアな彼を、周囲の裏切りや母国での不遇といった状況が追い詰めた末の悲劇であったことは間違いない。本来なら33回目の誕生日となるはずだった本日、この記事を掲載することになった。残念でならない。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)