永遠の若大将と呼ばれる加山雄三にも不遇の時代があったことをご存知だろうか。その時期を共に乗り切ったのが妻のめぐみさんだった。加山がそんな妻とのある約束を果たしたのは昨年のことだった。
俳優の上原謙と女優の小桜葉子が両親という環境で育った加山雄三は慶應義塾大学を卒業すると、俳優、歌手として成功する。映画、若大将シリーズや「君といつまでも」が大ヒットして順調だった。
だが1965年にパシフィックホテル茅ヶ崎を開業したことから状況は一変していく。同ホテルが1970年に倒産すると、彼は父と2人で巨額の負債を抱えることになるのだ。
この頃に女優だった松本めぐみと駆け落ち状態で結婚している。このことも若大将のイメージを崩して人気も下降していくのだ。
加山と妻のめぐみさんは総額23億円ともされる借金を返しながら過ごしていく。当時は1個の卵を2人で分けあって、卵かけご飯を食べたこともあるのだ。そうした並々ならぬ苦労の末、借金を10年間で返済した。
全てにおいて余裕があるイメージの加山雄三だが、こうした不遇の時代があったのである。
8月9日放送のテレビ「ごきげんよう」に出演した加山雄三が結婚40周年となることから、そんな妻とのエピソードを話してくれた。
前述のような理由で2人が結婚した頃は大変な貧乏状態だった。「貧乏どころか、明日食う金も無いような状況」と加山は当時を思い出す。
そんな貧乏時代に加山が奥さんにある約束をしたのだ。「いつかお金ができたら、タヒチのボラボラへ連れて行くよ」という約束である。
それから時は経ち、結婚40周年の1年前である昨年の9月のことだ。そのボラボラへついに奥さんを連れて行くことができたのである。
事前に加山が「おい、今年あたり行けそうだよ!」と突然切り出すと、奥さんは怪訝な顔で「どこへ?」と聞いてきたそうだ。加山がはっきりと「いや…ボラボラだよ」と言うと「忘れないでいてくれたのね」と奥さんも約束を覚えていたというのだ。
加山雄三はこの時を思い出して話しながら涙ぐんでしまった。それほど、約束を果たせたことが嬉しかったのである。
ところで、タヒチのボラボラはそれは素晴らしい環境で、ホテルのコテージも水上に浮かぶ幻想的な造りだったという。
コテージにはジャグジーバスが備え付けてあり、空には日本では見られない満天の星が瞬いていた。
加山は一緒に星を見ようと「おーい、来てごらん」と奥さんを呼んだ。そしてよく見えるようにと灯りを消したのである。
すると『ザバーーーン』と落水する音が響いたのだ。加山が「しまった、足をすべらせて海に落ちたか」と思い灯りをつけると奥さんが落ちたのはジャグジーバスだったのだ。
いつまでも楽しい加山夫婦は「いつも会話を絶やさない」という。しかも彼の方が「いる時はなんでもしゃべる」というほどおしゃべりなようだ。
「人生、上り坂あり、下り坂あり、まさかあり」だと笑う加山雄三に人生の苦難を乗り越えた大きさを感じた。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)