タモリといえば、イグアナのモノマネや、4か国語マージャンなどのギャグで知られるが、それも最近は滅多に披露しなくなった。以前はそれに加えて音楽ネタもよく見せており彼のトランペットをよく耳にしたものだ。だが、ある番組で「もうペットはやってない」と話していたことがあり、もう10年以上も楽器演奏は披露していない。そのタモリがアドリブでミュージシャンのスキマスイッチと演奏することになり観客を喜ばせた。
スキマスイッチは「奏(かなで)」、「全力少年」などのヒット曲で知られる、大橋卓弥と常田真太郎のユニットである。以前は常田のアフロヘアーが彼らのトレードマークとなっていたのだが今は髪を短くしている。
彼らの新曲「アイスクリーム シンドローム」がアニメ映画「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアーク」の主題歌ということもあり、最近はその宣伝に忙しいようだ。7月14日のテレビ「笑っていいとも!」に前日の宮本隆治(フリーアナウンサー)から友達の輪として紹介されて、そのスキマスイッチが登場したのである。
彼らは登場するといきなり「1曲歌ってもいいですか」といいながらタモリにボンゴ(パーカッション楽器)を渡した。ボーカルの大橋卓弥はミニギター(少し小ぶりのアコースティックギター)、キーボードの常田真太郎はミニピアノ(オモチャのピアノより少し大きい)を手にしてすでにやる気満々だったのである。
タモリも音楽は嫌いじゃないというより、好きでたまらないのだ。彼は早稲田大学ではモダン・ジャズ研究会に入っており、トランペットを演奏していた。この頃から楽器に通じており人気番組だった「今夜は最高!」では専属バンドとトランペットやフルートを演奏するのが定番だったほどだ。
常田からボンゴを手渡されたタモリは少し叩いてみると「あーっ!ちょっと(チューニングが)緩んでるなー」と指摘してポンポコと叩き出した。
それを聴いたスキマスイッチの2人が「さすがにうまいですね!」と感心していたのだ。彼らもタモリが音楽好きなことは知っているがそこまでいい音を出すとは思わなかったのだろう。
早速、3人で「アイスクリーム シンドローム」を演奏するとタモリのリズムの刻み方はとても素人とは思えないノリの良さで、ギター、ピアノ、パーカッションの3人編成のバンドで通用する演奏となったのだ。
スタジオアルタの観客はその演奏に聴き入り、しばしLIVEハウスのような雰囲気となったのである。
『しかし、タモリがやっていたのはトランペットやフルートのはず』と思われる方もいるだろうが、実はタモリはパーカッションでその人気を不動のモノにしたともいえるのだ。
赤塚不二夫や山下洋輔に世話になりながら芸能界に入ったタモリは、テレビ「金曜10時!うわさのチャンネル!!」でその名を広く知られるようになる。
そして彼の人気が定着したのがラジオ「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)のレギュラーとなったことだった。この時に企画した「ソバヤ」のコーナーは当時の中高生に爆発的にウケたのである。
それは、パーカッションのように机でも、タンバリンでも、空き缶でもなんでもいいので叩きながらアフリカの民族音楽風に「ソバヤ、ソバーヤ!ソバヤ、ソバーヤ!」と歌い叫ぶものだ。それをカセットテープに録音して提出するとタモリが番組で流して評価するという企画なのだ。
当時、1970年後半の学校の教室では休み時間に「ソバヤ、ソバーヤ!」という声が響き渡ったものである。もちろん、タモリ自身がこの「ソバヤ」の生みの親であり彼の「ソバヤ」に近づくことをみんな目標としたものだ。
タモリの歌う「ソバヤ」は1977年発売のデビュー・アルバム「タモリ」の中で「アフリカ民族音楽“ソバヤ”」として世に出ている。
「アイスクリーム シンドローム」を1コーラス歌い終わった彼ら3人はまるでLIVEを終えた時のように楽しそうな表情をしていた。
だが、一番嬉しそうだったのはタモリだったことは言うまでもない。テレフォンショッキングで翌日のゲストとして紹介された小西真奈美に電話する際に、タモリが「どうも、スキマスイッチのパーカッション担当です」と挨拶したことからもそれを察することができる。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)