最近は映画監督として多忙な北野武だが、お笑い界も忘れてはいない。彼が芸人ビートたけしとして、評価する芸人に「オードリー」がいる。6月12日放送のテレビ『メレンゲの気持ち』で彼はそのオードリーとのトークで芸能界で生き残る術について語ったのだ。

たけしが漫才コンビ『ツービート』時代に「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というネタで世間の笑いと批判を買った頃が昭和の漫才ブームのはじまりだった。彼らはそれまではタブーとされたネタをギリギリまで使う毒舌漫才で人気者となったのだ。しかし、先輩には「あんなの漫才じゃないよ」「ただウケればいいんじゃ無い」と酷評する者が少なくなかった。その経験があるからたけしは「若手の悪口は絶対に言わない」と心に決めているという。

たけしはM-1に出ていたオードリーを見たときに「新しいなこのやり方は…」と感心したという。だがオードリーのような新しい感覚は大切だがその基盤には先人の漫才があるから成立するのであり、いきなり新しい手法が通用するものではないと彼らに言い聞かせた。

『爆笑レッドカーペット』などいくつもお笑い番組を見ているというたけしは、特に『あらびき団』が好きで「はいつくばって笑ってしまうね」と嬉しそうに話していた。反面、『M-1グランプリ』はあまり見たくないそうだ。それは、出場している芸人たちに感情移入してしまい、ツービート時代の自分とダブってしまいドキドキしてしまうからなのだ。

気に入っているのは『ブラックマヨネーズ』で「ひな壇から人の横で何かやらせると最高に面白い」と褒めていた。しかし、彼らに代表されるように今の芸人が『ひな壇芸人』としてメインの横でウケることが『売れている』状態になっていることに危機感を覚えるというのだ。「オイラみたいなのが図々しくいつまでもいるから」と言い訳しつつも「早く、タモリとか紳助とかオイラを引っ張り降ろさないと」とオードリーに向けて話したが、これは若手芸人に向けた警告なのだ。

実はツービート時代に一旦、漫才ブームは去ったのだがその時の前兆として「ネタが楽屋ネタ、身内ネタになってきた」とたけしは振り返る。それに漫才ブームの限界を感じ、終わりが近いことを直感したたけしはラジオ『オールナイトニッポン』を担当したり、バラエティへ進出し始めた。それが『オレたちひょうきん族』『スーパージョッキー』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『風雲！　たけし城』などである。「漫才ブームは、いくら一組だけで頑張ってもブームが終わる時は一緒にダメになるからね」というたけしの話は経験に基づくだけにリアリティがあるのだ。「どうやって、違うところに足をかけて残るかを考えるんだね」と言われてオードリーも真剣な表情でうなずいていた。

たけしは漫才こそやってないがテレビ業も忙しく、現在レギュラー番組を8本持っている。だが彼は、司会の久本雅美から「どうやってそれをこなすのか」を尋ねられると「内容知らないものもあるんだ。『ああ、おどろいちゃいました』とか、カンペ読んでるだけだよ…」ときわどい発言で返した。久本もいきなりの暴露に「みんなの夢を壊さないで」と困惑してフォローしていた。最後にビートたけしの毒舌トークは衰えてないところを見せ付けたのだった。
（TechinsightJapan編集部　真紀和泉）