現代社会では一般に集中力は低下しているといわれ、例えば小学生に自宅で机に向かうことができる時間を尋ねると「10分くらい」と答えるCMもある。もちろん個人差はあるが、10分が特殊ではないのが現実なのだ。映画『告白』では中学校のクラスの生徒役として子役達が出演するわけだが、撮影では監督も主演の松たか子もこの“37人の13歳”には相当に苦労させられたと告白した。
6月5日より上映中の映画『告白』はストーリー展開はもちろんだが、主演松たか子の名演が話題だ。中島哲也監督はこの映画の話があった際に真っ先に松たか子に主演してくれるかを確認して、彼女がOKしたので映画の話も受けたとさえ言う。
その松たか子が映画の撮影で面食らったのがクラスの生徒達だった。設定では学級崩壊したクラスではあるが松が実際に教師として彼らと対峙すると演技とは思えないハチャメチャぶり。「みんな好き勝手に話して、自分の声が聞こえないほどだった」と松は撮影時を思い出した。同映画の始め20分間ほどは教師役の松がそんな生徒に「告白」する、つまり話して聞かせるシーンが続くのだ。このシーンがその後の展開に極めて重要であり、また下手をすれば退屈に感じさせてしまう危険性を持つものだった。それを見事に演じきった松はさすがである。
中島監督も撮影に当たり“37人の13歳”には苦労したようで、何より彼らは集中力が持続しないと話した。「彼らの集中力は10分しかもたないんだよね」と言うのだ。そんな状況下で20分間の重要なシーンを撮らねばならなかったのである。松たか子も中島監督も目には見えない苦労があったのだ。
ただ、そんな中学生が撮影中に異常に積極的になり、集中力を発揮したシーンがあったのだ。それは岡田将生とのシーンだと監督は言う。岡田将生の役はやる気満々の若手教師(ウェルテル)である。彼が登場するとクラス全員がそれまでとは違った意味でザワつき、演技も積極的になった。特に女子は「全員が岡田将生に向かって演技してましたね」と監督は苦笑していた。
この話は6月12日放送されたラジオ「シネマフル・ライフ」(FM福岡)が中島監督と松たか子にインタビューした時のものである。最後に二人に映画の見どころを尋ねたところ、監督は「言葉の裏側にあるモノを探って欲しい」。松は「決して親切な映画ではないので、何を言いたいのかを自分でも考えながら観てください」と話した。観るほうも集中力を必要とするようだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)