NHK総合で放送された「こころの遺伝子―あなたがいたから―」第3回に歌手のアンジェラ・アキが登場した。アメリカで暮らしていた頃の上司であり、ミュージシャンという夢に挫けそうになっていた彼女の背中を押した恩人への想いとともに、番組主題歌でもある新曲「輝く人」を歌った。
日本人の父親とアメリカ人の母親を両親にもつアンジェラ・アキが偏見に苦しみ、音楽に救いを見い出していったことはよく知られている。番組の中で小学校時代のエピソードが紹介された。それはクラスメイトたちにジロジロと覗きこまれ、食べられなくなってしまった妹のお弁当を一緒に川に流したという辛いもの。そのことについて「悲しいを通り越して悔しい思いをした」と語った。
アメリカで生活を始めてからも彼女の苦悩は続いた。音楽の道を志すも芽が出ず、大学を卒業してからは、昼は福祉関係の会社で働き、夜はバーでライブを行う二重生活が続いた。当時の彼女は自分のことを「落ちこぼれミュージシャン」と否定的な見方をしていた。車の中で化粧をしているときに鏡に映った自分を見て涙が止まらなくなったこともあるそうだ。
そんな折、職場の上司であったボブ・ビンガム氏が救いの手を差し伸べた。彼はアンジェラ自身が信じきれていなかった彼女の才能に気がつき、「Take a chance on you (自分に賭けてみなさい)」という言葉を贈ったのだ。彼のアドバイスによってアンジェラは、夢と向き合えていなかった自分に気がつくことができたという。それまでアンジェラは、音楽という夢を追いながらも、それを実現するためにどうすればいいのか具体的に考えてはいなかったのだ。
「輝く人」の歌詞には、強い自己否定感に苛まれながらも、真っ直ぐに自分を見つめ直すことで今の成功に繋がった彼女の生き方が表現されている。公式サイトによると「輝く人」は2008年「NHK手紙ドキュメンタリー」での中学生との出会いから生まれたものである。オリコンシングルチャート初登場3位を記録した「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」が過去の自分に手紙を出すという形式を取っているのに対し、「輝く人」は現在進行形の歌詞。夢を追う人々に自分から「目を逸らさないで」と訴えかける。
(TechinsightJapan編集部 KAZUKI)