その演技力は評価されていなかった。アメリカで最低の映画を選出する「ゴールデンラズベリー賞」の常連として知られ、映画『上海サプライス』(1986年)、『フーズ・ザット・ガール』(1987年)、『BODY/ボディ』(1993年)、『2番目に幸せなこと』(2000年)、『スウェプト・アウェイ』(2002年)で5度の最悪主役女優賞に選ばれている。
そんなマドンナを主演女優賞に導いたのが、アラン・パーカー監督の映画『エビータ』だ。当初、エバ・ペロン役にはミシェル・ファイファーやメリル・ストリープが候補に挙がっていたが、ある日マドンナがパーカー監督に4ページにも及ぶ手紙を送り、エビータ役を演じることへの情熱を伝えた。パーカー監督はマドンナに「私のエビータになるのなら、誰が現場を仕切るのかを理解しろ。マドンナのビデオのような派手な映画でないのだ」と釘を刺したという。そして主役に抜擢したマドンナの演技を、見事ゴールデングローブ賞で主演女優賞を獲得するまでに磨き上げた。
映画のために書き下ろされ、マドンナが歌った楽曲『ユー・マスト・ラブ・ミー』はアカデミー賞で歌曲賞を受賞した。同曲を含む『エビータ』のサウンドトラックの作曲を担当したアンドリュー・ロイド=ウェバー(72)は「スクリーンの上でのミュージカルを真に理解していた、数少ない監督の1人だった」とツイートしている。
同映画で革命家チェ・ゲバラをモデルにした語り部“チェ”役を演じたアントニオ・バンデラス(59)は「親愛なるアランへ、さようなら。僕をエビータに起用してくれてありがとう。あなたの映画撮影技術の見識に感謝します。あなたの遺した業績は偉大で素晴らしい」とツイートした。
エバ・ペロンの生涯を描いた作品『エビータ』は、元々はアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲とティム・ライス(75)作詞による大ヒットミュージカルで、1980年にはトニー賞で最優秀作品賞を受賞した。『エビータ』の映画化にあたり、当初予定していたオリバー・ストーン監督(73)がプロジェクトを去った後、アラン・パーカーが監督に就任した。
画像は『Madonna 2020年7月31日付Instagram「I was so sad to hear about the passing of Alan Parker.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)