「死ぬ前にもう一度海が見たい」「大好きだった桜の花を見てみたい」「孫の結婚式に出席したい」「サッカーの試合を見たい」―こんな願いを叶える救急車が注目されている。ロックダウン(都市封鎖)中のオランダでも休むことなく走り続ける救急車の話題を『LADbible』『Daily Mail Online』などが伝えた。
ロッテルダム=アルブランツワールト(Rotterdam-Albrandswaard)を拠点に活動するNPO団体「Stichting Ambulance Wens(Ambulance Wish Foundation)」は、2007年4月に元救急車の運転手キース・ヴェルボーさん(Kees Veldboer、60)によって立ち上げられた。団体の目的は「余命短い人々のために救急車で“最期の願い”を叶える」というサービスで、これまでの利用者は14000人を超えている。
団体の運営には270人の医療従事者のボランティアが関わっており、救急車は無料で依頼できる。救急車を運転するのは警察官や消防隊員のボランティアが多く、車内には必ず医療従事者が1人乗り込んで万が一の場合に備えている。
キースさんがこの活動を始めたのは、救急車の運転手をしていた2006年11月、患者のマリオ・ステファヌットさん(Mario Stefanutto)をある病院から他の病院に移送する際、受け入れ側の病院の準備が整わなかったことがきっかけだった。
時間ができたキースさんが「何かしたいことはありますか?」とマリオさんに尋ねると、「自分はクリスマスまでは生きられないだろう。3カ月も過ごした病院へ戻るよりも運河を見たい。船員だった自分が人生の多くを過ごした海を眺めたい。最期にロッテルダム港にさよならが言いたい」という答えが返ってきた。キースさんはそれならと、