ベレンさんは乗る予定だったフライトを見逃してしまった。ペブルズが同乗できないのであればどうすればいいのか必死で考えた。ベレンさんはレンタカーを借りることができる年齢に達していなかったがパニックになり、少なくとも6つのレンタカー会社に連絡を取ろうと試みた。しかしホリデーシーズン中とあって、どのレンタカー会社も空きがなかった。
次にベレンさんは「Greyhound Bus(グレイハウンド・バス)」の利用を考えたが、バスでは南フロリダに到着するまでに何日もかかってしまう。結局、その日遅くの便に乗ることに同意したものの、ボルチモアでペブルズを預かってくれる友人や家族はベレンさんにはいなかった。すると航空会社スタッフは、「ハムスターを外に逃がすかトイレに流すかしてください」と指示をしてきたという。そしてベレンさんは、自分を癒してくれた大切な存在であるはずのペブルズをトイレに流した。後にベレンさんは、このように話している。
「ペブルズを殺さなくても済むようにあらゆる方法を考えました。でも他に選択肢がなかったのです。寒空にペブルズを逃がしても凍死するかもしれないし、車に轢かれてしまう可能性もあります。それだったらトイレに流したほうがペブルズにとっては幸せだろうと思ったのです。怖かったし、ペブルズを流した後もすごく悲しくて10分ぐらいずっと泣いていました。」
後日、ベレンさんから苦情のメールを受け取ったスピリット航空は限られた都市への飛行が無料となる旅行券のオファーをしたが、ベレンさんはこれを拒否した。現在テキサス州の大学に通うベレンさんは、強烈なプレッシャーの中で苦渋の決断を強いられたこと、矛盾した指示を出されたことに対しスピリット航空への訴訟を検討しており、そのために弁護士も雇っている。近年、動物の機内への持ち込み問題が「システムの悪用」と批判を浴び、何かと物議を醸しているが、アダム・グッドマン弁護士は「つい先日も、クジャクを搭乗拒否された乗客がいたばかりですが、今回は他の乗客へ危険をもたらす可能性がある巨大なクジャクではなく、飼い主の手にすっぽりと治まる小さな可愛い無害のハムスターでした」と話す。
しかしネット上では、セラピーアニマルとして飼っていたハムスターを「選択肢がなかった」といってトイレに流したベレンさんの行為に、激しい非難の声があがった。
「トイレに流して殺さなくても、絶対に他に選択肢があったはず。そんなことするなんて信じられない。」
「いくら航空会社がダメと言ったからといって、トイレに流すというのは残酷以外なにものでもない。この女、航空会社を訴えるとか言ってるけど、動物虐待の罪で逮捕されればいい。」
「可愛がってたくせによくそんなことができるわね。」
「こんな女、もう二度とペットを飼うな!」
「自分を支えてくれていたペットをトイレに流すってどんな神経なんだよ。」
「自分が動物にした残酷なことを棚に上げて航空会社を訴えるだって? 恥を知れ!」
「セラピーアニマルとか言ってるけど、トイレに流すぐらいだから別にハムスターを必要としていなかったのでは?」
「正気では考えられない行為だ。」
「ひどいとしか言いようがない。」
なお、スピリット航空スポークスマンのデリック・ドンブロウスキさんは、この件について「女性搭乗客に誤報を与えてしまったことは認めます。ですが、明らかに我々スタッフは誰一人としてハムスターをトイレに流すような指示を彼女にはしておりません」と主張している。一方で米運輸安全管理局(TSA)は「ハムスターはセキュリティーを通過することに問題はない」と述べているが、やはりハムスターを搭乗させるか否かは航空会社によるようで、ユナイテッド航空、デルタ航空、アメリカン航空などの大手航空会社は安全衛生規約上、ハムスターの搭乗は許可していないという。
画像は『Metro 2018年2月8日付「Woman told she can’t take emotional support hamster on flight flushes it down toilet」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)