今年は7月8日に開催される「プライド・イン・ロンドンパレード(プライド・パレード)」。LGBTの人たちが集まってパレードをするこのイベントは、ロンドンだけではなくイギリス各地で毎年行われている。昨年、プライド・パレードに参加した警察官が恋人の男性にプロポーズした映像が、世界中に拡散され話題となった。しかしこのたび、その警察官が「脅迫や嫌がらせの声が殺到した」と心境を吐露した。英メディア『Metro』や『Gay Buzzer』が伝えている。
昨年のプライド・パレードには、メトロポリタン警察から80人ほどの警察官が参加した。その1人であるフィル・アドレムさんは行進中にリージェント・ストリートの真ん中で立ち止まり、パレードを見学中の群衆にいた恋人男性に跪いてプロポーズした。突然のプロポーズに恋人は笑顔で「イエス」と答え、その瞬間に大きな拍手喝采が起こり、周りに祝福されたフィルさんは幸福感に包まれた。
そのシーンがメトロポリタン警察LGBTネットワークのツイッターに投稿されると海を越えて拡散し、多くの反響を呼んだ。しかしフィルさんには祝福の声だけでなく誹謗中傷も多数寄せられ、署内では元同僚や現役同僚に敵対的な態度まで取られた。フィルさんは「こんなことならパレードの最中にプロポーズをするんじゃなかった」と思ってしまったという。それから1年を経て、フィルさんは英メディア『The Guardian』にその思いを明かしている。
フィルさんは、恋人へのプロポーズの映像が拡散されたことによって「お前ら2人死刑になれ」「気持ち悪い」といった嫌がらせの声を受け、祝福コメントを読んで溢れた笑顔は決して長続きしなかったそうだ。
だが今回の批判はフィルさんにとって初めてのことではない。『The Guardian』によると、18歳の時に恋人の男性と出かけたところを「アンチ・ゲイ」の男3人に襲われたという。男らは通報により駆け付けた警官に取り押さえられるまで暴行を止めず、フィルさんは深刻な怪我を負わされた。
そんな辛い経験をしたフィルさんだが、このようにも語っているのだ。
「ゲイであることを公にできない国もありますが、イギリスに住むことができゲイであることをオープンにして警察官としても仕事ができるのですから、自分は幸運です。現状としてLGBTの4人に1人がいじめに遭っており、私が受けた批判は驚くべきことではありません。ですがいじめや暴力などの経験を受けたLGBTの人たちにとって、このイベントは強く前向きになれる貴重なものです。プライド・パレードをみれば、LGBTの存在を無視できない世の中になっているのは誰の目にも明らかなはずです。」