決して減らない実親からの虐待。数ある事件を目の当たりにしてきた警察官でも、その現場から救った子供を養育することなどできることではないだろう。しかしこのほど、米オクラホマ州でひとりの男性警察官が両親による悪夢のような虐待から救った少年を養子に迎えた。米『CBS News』や『International Business Times』など複数メディアが伝えている。
オクラホマ州ポトー警察署に16年勤務するジョディ・トンプソンさんは2015年のある日、実の親から虐待を受けている子供の通報を受けた。その時非番だったジョディさんだが、勤務中の署員とともに何かできることがあればと現場に向かった。
ジョディさんが、その光景を見た時「今まで見たことないほど最悪だ」と感じたそうだ。通報を受けた家では、両親から一切食べ物を与えられていなかったために8歳にしてわずか25kgを少し上回っただけの少年がいた。しかも体は痣だらけで、冷水で満たされたゴミ箱の中にロープで両手足を縛られ漬けられており、ずぶ濡れで震えていたという。すぐに病院へ搬送された少年が集中治療室で治療を受けていた間、ジョディさんは一晩中付き添っていた。
翌日、ジョディさんは同州福祉省(Oklahoma Department of Human Services、以下DHS)でジョンというその少年の里親認定を受けた。当時の心境をジョディさんは「ジョンは、自分と一緒ならとにかく安全なのだと思いました」と語っている。2015年の4月30日、ジョディさんはジョン君を自宅へ連れ帰った。事情を知らなかった家族はジョディさんに対して何が起こったのか聞くことをせず、ジョディさんがしたことは正しいことだと信じていたようだ。妻のジェニーさんと現在16歳、10歳の息子たちはジョディさんから事情を聞くと、ジョン君をすぐに受け入れた。
その2日後、偶然にもジェニーさんが3人目の子供を妊娠していることが発覚した。家族が増える中で、さらにジョディさんはジョン君の血の繫がった妹までも養子に引き取った。
ジョン君の母親は刑務所にいた2015年11月に、娘ペイズリーちゃんを出産した。ジョディさんはDHSからその連絡を受け、「養子として引き取らないか」と相談されたという。こうして夫妻は生まれた翌日のペイズリーちゃんを自宅に引き取ったものの、彼女の両親は親権を手放すことを拒否した。そのため長期にわたり裁判が行われたが2月16日、ペイズリーちゃんはジョディさん一家の子供として正式に認められた。