「12年生(12th grade)」で高等教育を終え、遠い大学に進んで家を離れることが多いアメリカの少年少女たち。ある父親は愛娘が小学校に入学すると毎年同じ日に彼女と語り合い、その様子をビデオに収めることにした。長い夏休みが終わりを告げ、父と向かい合ったソファに座り新学年の抱負を語る娘。思春期になると父と娘の触れ合いが難しくなるのは洋の東西を問わないが、彼女は最後まで辛抱強くその“儀式”に付き合ってあげたようだ。愛娘の成長記録となるそのアルバムがYouTubeに投稿され、「お金では決して手に入らないこの世で最も大切なもの」といった感動のコメントが続出している。
愛娘マッケンジーさんの進級・進学の初日の様子を12年にわたり撮影し続け、今月10日の高校卒業を機に“卒業おめでとう、マッケンジー”という動画作品を発表したケヴィン・スクラッグスさん。アメリカの典型的な良きパパといった雰囲気が伝わってくる彼の職業は牧師。人々の相談を受けながら生き甲斐や希望を持つよう導いていくライフ・コーチングも行っているそうだ。
小学校入学時はかなりぽっちゃりとしていたマッケンジーさん。低学年では勉強のこと、友人のことなどパパの質問に嬉々として答えるが、成長とともにお茶目な表情が消えて答えもボソボソ、あるいはそっけないものになり、困ったパパが「そのTシャツの文字、なんて書いてあるの?」と尋ねて緊張をほぐそうとする一幕も。また長いことぽっちゃりしていたマッケンジーさんは高校入学(6-2-4制の9年生)の初日には痩せてぐっとキレイになり、パパも「いよいよフレッシュマンだね」と興奮気味だ。そして高校2年にあたる10年生の初日、マッケンジーさんはごく小さな声で「キュートな男の子を見つけるのが楽しみ」と囁く。「いいね」と言うケヴィンさんの声は心なしかガッカリしたように聞こえる。
そして最後の撮影となった12年生の初日。髪をゴージャスにカールして現れたマッケンジーさんは、まずは面倒臭そうなアクビをしてみせる。パパの想像通り「楽しみは高校卒業とプロム(その盛大なパーティ)」だそうだ。だが撮影の最後には毎回必ず「I love you, sweetie.」と声をかけていたケヴィンさん。年齢が進むと恥ずしさも増して声は小さくなっていくが、マッケンジーさんもちゃんと「I love you, too.」と返している。動画は12年にわたり繰り返されたその「I love you.」の応酬で完結していた。