北米やカナダで卒業を控えた高校生たちにとって「プロム」は一大イベントだ。このほどひとり息子のプロムのために総額25,000ドル(約275万円)の費用をかけて準備をした母親が話題を呼んでいる。大金を費やしたこの母親に批判の声もあったようだが、実はこれだけ盛大なプロムの準備をした背景には深い理由があった。米『NBC10 News』や『Billy Penn』が伝えている。
米ペンシルベニア州フィラデルフィア北部に住むサウジア・シュラーさん(43歳)は、ひとり息子ジョニー・エデンJr君のために、盛大なプロムの準備を1年以上前から進めてきた。
アフリカ系アメリカ人の伝統料理“ソウルフード”のレストラン「Country Cookin」の経営者であるサウジアさんは、最初ジョニー君に高校卒業祝いとしてドバイへの旅行をプレゼントしようと考えていたが、ドバイをテーマにしたユニークなお祝いの方法を考えついた。
サウジアさんはジョニー君の記念撮影のために、近所にドバイをイメージして3トンの砂や壁画で作られたセットを友人や家族らの協力を得て再現した。また、オハイオ州の農家からは1年半前に予約していたラクダをレンタルしている。
さらにロールスロイスやレンジローバー、ランボルギーニなどの高級車もレンタルし、3日間分の異なる衣装をカスタムメイドした。ジョニー君はスタイリストの指示を仰ぎながら衣装を着てガールフレンドとプロムに参加したという。
「息子はもともと、プロムに行くことを嫌がっていました。私の計画を知ると『ママ、やり過ぎ』と言っていたほどですが、私は息子の記念のプロムを思いきり盛大にしたかったのです」とサウジアさんは語る。というのもサウジアさんにはそのように願う深い理由があった。
ジョニー君の父親は、ジョニー君が幼い頃に殺害された。その時2人目を妊娠していたサウジアさんは流産し、悲劇を乗り越えながら女手ひとつでジョニー君を育ててきた。しかし2007年、サウジアさんは車に轢かれる事故に遭い、美容師の仕事を断念せざるを得なくなってしまう。その後、甲状腺がんと診断され2015年に手術を受けた。がんを患っている時期と同じくして、脳卒中にも見舞われ発作も起きた。1年半、歩くこともままならなかったサウジアさんは「もしかしたら、息子のプロムをこの目で見ることができないかも知れない。でも生きていられたらプロムを盛大なものにしてあげよう」と決心し、それからは毎週、プロムのために貯金し続けたのだ。