問題のパイロットは、フロリダ州ミラマーに本社を置く米・格安航空会社の「スピリット航空(Spirit Airlines)」に雇われていたブライアン・ハイリー(36)。去る3月16日、オハイオ州モンゴメリー郡センターヴィル市の自宅から子供の声で両親の異変を伝える911番通報が入り、ブライアンおよび妻コートニー(34)の2名がベッドルームで心肺停止の状態で発見された。
緊急通報指令室との電話で「スクールがあるのにパパとママが起きてくれない。体がとても冷たくなっていて呼吸していない。肌の色が真っ白で顔には黒い線みたいなものがある」などと伝えたのは夫妻の13歳になる息子であった。受話器の後ろからは3人の姉妹の泣く声が伝わってきた。調査はまだ続いているが、両者ともに薬物過剰摂取による急性中毒死とほぼ断定されているもようだ。センターヴィル警察が現場からドラッグ吸引器具を押収したほか検死では大量のヘロインとフェンタニルが検出され、死因の確定には4~6週間を要するという。フェンタニルは歌手のプリンスを死亡させたとして有名になったモルヒネより断然強い麻酔鎮痛剤、合成オピオイドである。
この件についてスピリット航空は17日、「ブライアン・ハイリーの乗務について確認したところ、当エアラインでの経験は9年。3月10日のフライトが最後の操縦でした。すべての乗務員、従業員に対して薬物およびアルコール摂取に関するアトランダムな検査を実施しており、陽性反応が出た者はすぐに解雇します」と説明。改めて社員教育を徹底すると約束した。しかしヘロイン依存のパイロットを雇っていた事実はエアラインとしての信頼度を著しく損なうものであった。
コートニーの母親であるナンシー・ケイシーさんは、『NBC News』の取材において「娘は1型糖尿病を患っており、うつ病にも苦しんでいました。薬が欠かせないとはいえ、とても明るい子。私たちと暮らしていた頃には違法薬物に手を出すことは決してありませんでした」と話し、娘夫婦は社会のどん底に堕ちたヘロイン中毒者のイメージとはかけ離れていることを強調した。一方、センターヴィル警察はモンゴメリー郡における1月、2月の違法薬物関連の検挙数は過去最高だと市民に警告。地位も名誉も忘れてドラッグに走り、人生のすべてをダメにしてしまったハイリー夫妻を反面教師にして欲しいもようだ。
パイロットに関する醜聞、事件は実はなかなか多い。カナダではLCCのパイロットがコックピットで気絶。泥酔状態であったことから逮捕されたほか、ノルウェーでは機長、副操縦士いずれも検査で高アルコールレベルであることが判明し、旅客機が飛べなくなってしまった。また、女性60名を雇って売春宿を経営していたとしてユナイテッド航空のパイロットが逮捕された例もある。
出典:http://www.nbcnews.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)