日本の徳島市の県道で23日夜、横断していた女性2人を時速50kmほどで走行していた乗用車がはね、1人が死亡、1人が重傷を負った。過失運転致死傷容疑で逮捕された五王敬治容疑者(39)は、ゲームアプリ「ポケモンGO」をしながら運転していたことを認めている。海外のメディアもこの死亡事故の報道を重く受けとめているもよう。日本より先に配信がスタートした英米などではユーザーの意欲、アクティブ率などに変化は起きているのだろうか。そのあたりを『ワシントン・ポスト』ほかが伝えている。
日本全国の道路事情は「危険」と認めざるを得ないものがある。車道、歩道、自転車道の境がはっきりとしている他の先進国から来た人々がまず驚くのは、日本人は日常生活で人も自転車も車も狭い道路を一緒に利用しているということ。そうした国での「ポケモンGO」の配信スタートが事故につながりかねないことは、日本の道路事情を知る世界の人々が想像していたに違いない。
度々こちらでも報じてきたように、アメリカでは「ポケモンGO」に夢中になるプレイヤーが他人の敷地に入り込んで発砲され、木に激突して高級車を大破させ、高い崖から転落するなど命がけの事件、事故が多発し、死者も出ている。そんなニュースもやっと一服という今、『ブルームバーグ』が「Sensor Tower、SurveyMonkey、Apptopiaなどが行った調査の結果を見る限り、このゲームの流行のピークはすでに去ったようだ」と伝えて話題になっている。ダウンロードしてちょっと遊んでみたけれど最近は放置しているという者が、予想外に多いのであろう。
またイギリスでも同様の現象が起きている。『BBC』はこのほど「7月中旬にAxiom Capital Managementが行った調査に対し、1千万のユーザーが『もうやめた』と回答しているほか、日々のアクティブユーザー数を調査するPokemon Go’s Daily Active Users(DAUs)によれば、7月17日の4,500万をピークに8月16日には33%減の3,000万にまで落ちたそうだ」と報じた。
『pocketgamer.biz』の編集者であるクレイグ・チャプルさんは、「事前の宣伝が華やかで期待が大きいほど爆発的なブームが来てあっという間に去る、これは仕方のないことです。それでも3000万の登録があるというのは実に素晴らしい」と語る。星の数ほどゲームアプリが存在する今、アップデートを繰り返すことにより新しい楽しい発見が常に満載という状況を維持しない限り、たった1つのゲームが人々の気持ちを長く惹きつけておくことなどそもそも困難なのであろう。また「ポケモンGO」絡みの事件、事故のニュースが頻発し、歩きスマホに冷たい視線が注がれるのも嫌だといった意見も当然あるはずだ。
そんななかで「ポケモンGO」の配信を大歓迎するムードにあるのが、パクリゲームの横行が問題になっている中国の人々。そしてスリランカからも配信を待ち望む人々からの熱い思いがナイアンティックに寄せられているもよう。「一気にダウンロードが集中したとしても、この国にはサーバーをクラッシュさせるほどの人口がいないから大丈夫!」と知らせる者までいるそうだ。
しかしナイアンティックは町のいたるところで車、自転車、通行人、ベビーカー、車イスの安全が確保されているアメリカで生まれた企業である。そのすべてが一緒くたに道路を利用しているようなアジアの国々、特に人口過密で交通事故も多発している中国などで配信することの危険性を、日本で起きたこのたびの事故を元に深く考慮して欲しいところである。
もちろん、ユーザーが「もうやめた!」と思うきっかけは事故だけではあるまい。アカウント登録で認証がなされない、移動速度や電波の影響でポケモンが表示されない、“足跡”が減らない、地方に行くとポケストップもなくポケモンは出現しない、ポケモンの戦闘でズームすると操作不良が発生する、画面が暗転するといった不具合、不満が次々と報告され、修正が追いつかない状況だとも報じられている。
ちなみにこのたび配信がスタートした台湾の熱狂ぶりについては、『騰訊(Tencent)』が台北の「北投公園」の状況を伝えて注目を集めた。そこは夜を徹して大変な人出となり、付近の道路にまで群衆が押し寄せて車が動けない事態に警察が出動したとのこと。深夜まで騒々しくゴミを散らかすなど近隣住民に大きな迷惑を掛けているほか、ビジネスは停滞、痴漢被害も出ているという。
出典:https://www.washingtonpost.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)