たいていの人は休暇でどこかに出かけることにワクワクするだろう。ところが自閉症を患う人とその家族にとってはそうもいかない場合が多い。繊細さゆえに不安症状や神経質になったりしやすく、また、滞在先で思うような対応が得られないことがあるとストレスも感じやすい。そんな自閉症の人や学習障がいを抱える人たちに快適に過ごしてもらおうと、特別なホテルがイギリスに誕生するという。
イギリスの北東部、ニューカッスルの近くにあるゲーツヘッドで「ザ・ヴォルト(The Vault)」という「自閉症の従業員たちによる自閉症の人々のためのホテル」が一部オープンした。
元々は「リバーズ・エッジホテル(the River’s Edge Hotel)」として営業していたが、今年初めにセント・カミルス・ケアグループ(The St Camillus Care Group)が買収した。自閉症や学習障がいを患う人たちのために、200万ポンド(約2億6千万円)の予算を投じて改築されている。このホテルは、レストランやエンターテインメント施設がすでに営業を開始。ホテルとしての部屋は現在改装中だが、今年10月には全館オープンの予定とのことだ。
ヘルスケアとホテルのインテリア・家具などのハウジング全般を指揮するダレン・ウィルソンさんは、福祉と住宅産業のフィールドで14年の経験を踏んで来たベテランである。そんなウィルソンさんと共にこのホテルをサポートしているのが、ホテルの総責任者であるジョン・ハーロンさんだ。実はハーロンさん自身も、学習障がいを持っている。この2人が今回、自閉症の人たちのために宿泊施設を提供するという夢を現実に変えたのだ。
現在、アメリカにも自閉症や学習障がいを抱える人たちのための“フレンドリー”なホテルは存在するが、この「The Vault」のように対象客が自閉症と特別なサポートを必要とする人たちのみというのは初めての試みとのこと。しかも従業員も自閉症や学習障がいを患っており、彼らはしっかりと研修を受けている。繊細で自分のペースをしっかり守る自閉症の人たちにとっても、こうしたホテルは従業員の理解力が深いために心地よく滞在できるのではないだろうか。
ハーロンさんはサイト『chroniclelive』に、「彼らにはユニークさがあり、隠れた才能もあります。18歳~25歳の自閉症を抱えている若い人たちにとってサービス業に従事するということは、将来フルタイムで働ける従業員としてキャリアを積み、他の人と同じようにスキルを活かした仕事ができる可能性を得るという大きなチャンスに繋がります」と語っている。
出典:http://www.chroniclelive.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)