肺がんで毎年大勢の人々が死亡するなど、深刻な大気汚染に苦しめられている国々。中国と近いこともあって、日本は上海や北京の大気汚染のニュースにばかり注目してしまうが、実は比べものにならないほど危険なのが工業地帯を多く擁する河北省だ。さらに世界に目を向けると、河北省より空気がよどんでいる地域はたくさんあるようだ。
世界保健機関(WHO)はこのほど、世界の都市に関する大気汚染の状況を発表した。「非常にショッキングなデータであり、大気汚染は驚異的なスピードで警戒レベルに達している」とWHO。文明の発展、各種の開発事業には水や空気の汚染がつきものだが、その対策や浄化設備がまったく追いついていないもよう。世界中の都市と呼ばれるようなエリアの80%以上がWHOが定める大気汚染の基準値を超えており、その指数は過去5年で8%上昇したことになるという。
このたびWHOが発表した世界約3,000エリアにおけるPM2.5の汚染濃度を示す指数のワーストランキングにおいて、中国の天津は51位、北京は56位、南京は81位、上海は242位と実は想像したほど悪くはない。逆に、多くの工場が石炭をエネルギーとして稼働している河北省の大気が、甚だしく汚染されていることが改めて浮き彫りになった。
9位 河北省ケイ台市-128
10位 河北省保定市-126
14位 河北省石家荘市-121
19位 河北省邯鄲市-112
24位 河北省衡水市-107
29位 河北省唐山市-102
37位 河北省廊坊市-96
48位 河北省滄州市-88
アメリカがん協会の学会誌である『CA: A Cancer Journal for Clinicians』に最近発表された論文では、中国では昨年400万人ががんと診断され、約300万人ががんのために死亡したとのこと。またWHOによれば、特に中国全体の肺がん患者数は過去30年ほどで5倍近くに増加し、2025年までに100万人に達する可能性も否定できないという。
また、これらのエリアよりひどい大気汚染にあえぐエリアがインドほか中東やアフリカに集中していることも軽視できない。PM2.5の汚染濃度のワースト1はアフガニスタンとの国境にも近いイランのザーボルで217、ワースト2はインドのマディヤ・プラデーシュ州グワーリヤルで176、そしてワースト3はインドのウッタル・プラデーシュ州イラーハーバードで170となっている。また砂嵐の被害で有名なサウジアラビアのほか、パキスタンやアフリカの深刻な大気汚染エリアもワースト50位以内に位置している。
日本の大気汚染についても気になるところだが、リアルタイムで各地の指数を示してくれる「アジアの大気汚染:リアルタイム気質指数ビジュアルマップ(http://aqicn.org/map/jp/)」が参考になるかもしれない。ちなみにWHOはPM2.5について、健康上、可能であれば指数10以下の土地で暮らすことが望ましいとしている。
出典:http://www.theguardian.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)