米マサチューセッツ州ボストンのマサチューセッツ総合病院で今月8日、アメリカ国内初となるペニス移植手術が行われた。『usatoday.com』など複数のメディアが報じている。
マサチューセッツ総合病院の医師団は8日、64歳のトーマス・マニング(Thomas Manning)さんに米国初のペニス移植手術を行った。マニングさんはマサチューセッツ州ハリファックス出身の元銀行員で、2012年に陰茎がんによりペニスを失った。手術は15時間にも及んだが、今のところ拒絶反応は見られないという。
移植手術は臓器バンクとの交渉のほか、形成外科、再建外科、泌尿器科、精神医学、感染症など様々な専門分野の医師や医療ソーシャルワーカーなど50名以上がチームを組み、3年半を費やして準備にあたってきた。16日に行われた医師団の会見で、執刀医のカーティス・セトルロ(Curtis Cetrulo)医師は「マニングさんの経過は順調すぎるほどで、排せつ機能と生殖機能の復活にはそれほど時間がかからないとみています。彼のように前向きな患者を執刀できて本当に嬉しく思います」と述べている。
さらにセトルロ医師は「患者のこれまでの苦しみは想像を絶します。私たちの最初の移植患者には肉体的に健康であることはもちろん、手術後のストレスに耐えられる精神的な強さが求められました。そんな中でマニングさんは“完全な自分を取り戻したい”という気持ちが人一倍強い患者だったのです」と語った。
マニングさんは「ペニスを失ったときの喪失感は言葉にできません。この手術の成功が同じ病気で苦しむ人、そして何よりも前線で戦い生殖器を損傷した兵士への希望につながればと強く願っております」と病室からメッセージを送っている。
アメリカ国防総省の報告によると、2001年から2013年までの間に1367人の兵役男性が生殖器の負傷登録をしているとのこと。セトルロ医師は「将来ある若者が生殖器の損傷で殻に閉じこもり自殺するなど、悲惨なケースがあとを絶ちません。より多くの人がこの移植手術を受けられるように働きかけ、今後も手術を続けたいと思います」と明かす。
これまでのペニス移植手術は世界で2例報告されており、2006年に中国で行われた最初の手術は失敗に終わった。2例目は2014年に南アフリカの男性(当時21歳)が手術を受け成功。この男性は生殖機能も順調に回復しなんとパパになっている。
マニングさんは一生涯にわたって、拒絶反応を防ぐための免疫抑制剤を服用しなければならない。移植促進には、免疫抑制剤による副作用や移植手術後の拒絶反応への対応、ドナー確保など乗り越えなければならない課題は多いが、今後のさらなる進歩に期待したいところだ。
出典:http://www.usatoday.com
(TechinsightJapan編集部 A.C.)