「ロキタンスキー症候群」をご存知であろうか。女の子として生まれるもいつまでも月経が訪れないことで診察を受け、残酷にも“女性器が存在しない”と告げられてしまうという。このほどギリシャの女性が「世の中にはこんな体で生まれてくる人もいるということを理解してもらいたい。同じ症状に悩む人々の心の支えになりたい」として英メディア『BBC』とのインタビューに応じ、自身の体について赤裸々に告白した。
1838年にロキタンスキーという博士が初めて発表した、原発性無月経と腟や子宮といった女性器の欠損を主徴とする「Rokitansky(ロキタンスキー)症候群」。まったく聞きなれない病名であるが、女性の5000人に1人の割合で発生しているというから、実はそう珍しい病気ではないようだ。
ギリシャのアテネに暮らすジョアンナ・ジアノウリさん(27)もその症候群に悩んできたひとり。14歳になっても初潮が訪れず、16歳の時に彼女の体を診察した医師からは「子宮体部、子宮頸部、膣のいずれも存在しない。遺伝子の突然変異が疑われる」と告げられていた。子作りは難しくても普通の女の子として恋愛くらいはさせてあげたいという周囲の気持ちもあり、ジョアンナさんは17歳になってから形成外科分野の手術を受けることに。医師は彼女の体に膣を作ってくれたが、会陰があまりにも小さくボーイフレンドの体を受け入れる時の痛みはひどいものがあったため、さらに切開が必要であったという。
その後はどうにかスムーズな性行為が可能になったが、ジョアンナさんが男性との交際で精神的な満足感を得たことはほとんどなかった。この女性器は作り物といった罪悪感や恥ずかしさ、事実を知られたらどうしようという不安、そして何より自分自身に女性としての価値や自信を見出すことができなかったそうだ。そして21歳の時には婚約に至った相手もいたが、勇気をもって事実を告げたところ彼はひるんで逃げてしまった。
「私が苦しむのはここがアテネだから。人々は精神的にとても保守的で閉鎖的、まるで中世の人々みたいだわ。かつて私もこの苦しみを誰かに聞いて欲しくてたまらなくなり、2人くらいの女性に悩みを打ち明けたことがあるの。どちらも恐れをなしたのか、私の前からいきなり消えてしまったわ。」
手術やたくさんの悲しい経験を経て現在のジョアンナさんは交際5年のボーイフレンドと穏やかな愛情で結ばれている。彼は「子供は無理しなくても」と言ってくれるが、ジョアンナさんは里親、代理母出産などにも興味があるそうだ。「これは神様が与えた試練と人生の勉強ね。でも素晴らしい男性にも巡り合えたし、この症候群に苦しめられている女性たちの中で私は最も幸せだと思う」と語ると美しい微笑みを湛えたジョアンナさん。もっとも彼女の母親は「私が妊娠中に何か誤ったことをしてしまったのかしら」といまだに落ち込んでおり、その姿を見ることだけは辛いという。
出典:http://www.bbc.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)