水深11kmの深海といったらまさに暗黒の世界、“静けさ”もさぞかし不気味であろうと思いきや、実はそうでもないことが分かったそうだ。オレゴン州立大学が公式サイトでそれを発表し、大きな話題となっている。
「深海はシーンと静まり返った世界だと考えられてきましたが、意外にもさまざまな騒音に満ちた世界だと分かりました。」
そう発表したのは米・海洋大気庁、オレゴン州立大学、米・沿岸警備隊からなる共同研究チーム。昨年7月にマリアナ海溝の中でも特に深いとされる、水深なんと10,920mの「チャレンジャー海淵(Challenger Deep)」にて録音作業をおこなったという。
調査は23日間にわたるもので、ウォーターカラムを使用して秒速約5mで慎重に沈められたのはチタン製ケースに入った「ハイドロフォン(水中聴音装置)」。海底生物が動いた時、地震が起きた時にどのような音が拾われるものかと期待されたが、フタを開けてみればもっと多くの音が含まれていた。地震、ヒゲクジラのうめき声、これは想定内であろうが、偶然海上を通過したカテゴリー4の大型ハリケーンの暴風が波をどよめかせるような音、グアム・フィリピン・中国などを往来するコンテナ船のスクリュー回転音が不協和音のごとく記録されていた。特に水深約10km付近でマグニチュード5.0レベルの地震が起こった際には、想像を絶するような異常音が録音されていたという。
ここまでの数か月にわたりそうした音の分析を進めてきた研究者らは、「深海はまだまだ未知の世界。宇宙で太陽系外惑星を探る科学者たちと同じ気分を味わっている」と語る。2017年には再びチャレンジャー海淵でもう少し長期の録音作業が計画されているそうだ。
いずれにせよ、マリアナ海溝の海底に何らかの装置を沈めるという行為は大変な圧力との闘いを強いられる。普段我々が過ごしている家やオフィスにおける気圧の1,088倍かそれ以上にもなるため、非常に優秀で頑強なハイドロフォンが登場しない限りこうした調査はあり得なかったそうだ。共同でその開発にあたったオレゴン州立大学の海洋エンジニアで電気工学専門のハル・マツモト氏、そして米・海洋大気庁のエンジニアであるクリス・メイニグ氏の功績は大きく称えられるものだという。
出典:http://oregonstate.edu
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)