今からちょうど1年前にこちらでお伝えした、障がい児を含む4人の子を育てる米ノースカロライナ州の20代の女性が宝くじで高額賞金を当てた話題。しかし当選者の情報が公開される国だけあり、彼女はその後、とんだ“寄付金争奪戦”に巻き込まれていたようだ。
当選賞金が破格なことで知られるアメリカの宝くじ“Powerball”。昨年のちょうど今頃、キャリーオーバーが続いたことから賞金が5億6410万ドルにも膨らんでいたそれを見事に当てた3名のうちの1人が、米ノースカロライナ州シャーロット在住のマリー・ホームズさん(当時26歳)であった。彼女は4人の子を育てるシングルマザーで、そのうち1人が脳性小児まひを患ったことから「ウォルマート」および「マクドナルド」のアルバイトを辞め、福祉手当のみで生活。そんな中での1億8800万ドル(当時は日本円にして233億円に相当)当選に、人々は「苦労屋の彼女を神様は見捨てなかった」と大きな拍手を送ったのであった。しかし…。
アメリカでは宝くじに当選した場合、本人がその当選発表イベントに登場して顔や氏名をさらすことが賞金を受け取る基本条件となる。それは賞金を独り占めせず地域社会、教会、慈善団体などにどんどん寄付してほしいというプレッシャーにつながり、それをやってこそ当選者は近隣住民から感謝され、妬みを買わずに済むのだ。破格の賞金を手にして税金を支払った後に子供たちと暮らせる家を購入し、拘置所にいるボーイフレンドの4度の保釈保証金として計2,100万ドル(約24億円)もの大金を支払ったと報じられたホームズさん。そして昨年12月には、彼女が幼い頃から通い続けてきた「Pleasant Hill Missionary」というバプテスト教会に70万ドルを寄付したという。
ところがそのマリー・ホームズさんがこのほどある教会の牧師に訴えられてしまった。彼女の新しい家に出向いては熱心に寄付金を依頼してきたという原告のケヴィン・マシューズさん。彼の教会のために憩いと癒しの場となる施設を新たに建設したいとして、土地購入のため100万~200万ドルの寄付を懇願し、彼女はついに150万ドルの寄付に同意してくれた。しかしそれは口約束のままで支払われていない。すでに不動産業者との交渉にも入っていたとみられるマシューズさんは、米メディア『EURweb.com』にこう話す。
「カーメル・フィートンというおばが、ホームズさんに“そんなことをする必要はない”と熱心に説得したそうです。この計画が実現しないのは彼女がそんな第三者の意見に惑わされているから。その裏切り行為で私は今、大変な苦痛を味わっており、精神不安のため多くの薬に依存するようになってしまいました。彼女にはこれらをすべて償っていただきたい。」
こうしてマシューズさんはホームズさんに対し、1000万ドル(約11.4億円)もの高額訴訟を起こしたのだ。高額の宝くじに当選するとその後に必ず付いて回るのがこうした寄付金争奪戦。どこまで寄付すれば社会が満足してくれるのか、本人も平和な暮らしを維持できるのかわからないところが怖い。
出典:http://www.wcvb.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)