書店、文房具店などで近年、目立つ位置に陳列されるようになっているのが「大人の塗り絵」。欧州を発端とするそのブームが日本でも広がりつつあるが、どうやら超ストレス社会の米国でもファンが確実に増えているもよう。悩める大人たちはまずは色鉛筆を買ってみよう…!?
枠はすべて描かれており、そこに好きな色を好きなように配置して絵を完成させる塗り絵の世界。子供の頃には大好きだったその塗り絵が、精神的な癒しをもたらすことをご存知であろうか。スイスの精神心理学の権威、カール・グスタフ・ユング博士が患者の治療に取り入れて注目されるようになった“アートセラピー”では、人々が独創性と工夫、美しい色彩、何を完成させる喜びに自然と豊かな心を取り戻していく。特に効果があるのは寝る前のひととき、静かな部屋で塗り絵の世界に没頭することだそうだ。
この大人の塗り絵が今、アメリカでも密かなブームとなっている。職場ではコーヒーなどカフェインを多飲し、ヒマな時には親しい人と電話でおしゃべりすることが大好きだが、テレビやPCの前に座ればそれにひたすら没頭。競争や差別に満ちた社会をストレスフルに生きるアメリカ人が、精神作用のある処方薬やカウンセリングに頼らず塗り絵によって心穏やかに眠りにつけるようであれば、目からウロコといったところではないだろうか。
「ストレス解消にとてもいい方法ね」とアシュリー・ヤチクさん。そして「クレヨンや色鉛筆の香りに幼少期の自分に戻ったような気がするわ。本当にリラックスできる時間よ。ウソだと思ったらまずは1回トライしてみて」と話すのはカレン・ライオンズさん。すっかり塗り絵のファンだという彼女たちが手にする塗り絵帳は、大人向けだけあってデザインは実に精巧かつ洗練されたものばかり。アメリカでは「バーンズ・アンド・ノーブル」といった有名書店で1年ほど前から宣伝されるようになっていたが、一旦手に取るとどんどんハマっていく人が多いそうだ。
ピッツバーグで臨床心理士として活躍しているジョセフ・クヴィトコウィク博士は、地元メディアの『pittsburgh.cbslocal.com』に「ストレスが氾濫する中で生きていると、人は単純な枠や区切りによって囲まれた何かに安心感を抱き、そこに美しい色彩を与えることに喜びを抱くのかもしれません。また色鉛筆を動かすかすかな音や、心地よい集中力は催眠効果をもたらすことでしょう」などと説明する。世界各地で静かに定着してきたこの「大人の塗り絵」ブーム。嵐のように来ては去っていく大流行商品とは趣がやや異なるようだ。
※ 画像はpittsburgh.cbslocal.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)