長なたとハンマーが少年の腕と手の指に振り下ろされる。襲撃はそれだけにとどまらなかった。舌をくり抜かれそうになり、前歯を根こそぎ持っていかれる。死線をくぐり抜けたものの、エマニュエル・フェスト・ルテマ君(Emmanuel Festo Rutema、13)は、今では義手をつけ言語障害に苦しむ。寝る時はぬいぐるみが欠かせないという。
彼だけではない。ムゥイングル・メガサ君(Mwigulu Magesa、12)の腕も無残に切断されている。「いつか大統領になって、アルビノの襲撃や殺害に関わる人たちを裁いてやりたい。絶対死刑だよ。絞首刑だ」と思いを語る。英メディア『metro.co.uk』が伝えている。
突然変異や遺伝的欠損により発症する「アルビノ(先天性色素欠乏症)」は、メラニンの欠乏により体毛や皮膚が白く瞳孔が赤いのが特徴だ。世界中で20,000人に1人の割合で発症するというアルビノ人口の多くがアフリカ南東部(サブサハラ)に集中しており、タンザニアでは1400人に1人がアルビノであると言われている。アルビノの誕生は悪運をもたらすと信じられている一方で、呪術師によってその身体の一部を煮出したものを幸運を運ぶ秘薬として使用する。襲撃の際に泣き叫ぶ声が大きければ大きいほど、切断部位に宿る力は強力になるという。
国連は大統領選と議会選を10月25日に控えたタンザニアで、アルビノを狙った襲撃が増加していることに警鐘を鳴らす。地方の迷信深い政治家たちがアルビノの人々の身体の部位を高値で取引し、勝利を願うためだ。タンザニア政府は深刻な事態に呪術師の禁止措置をとってはいるものの、その被害はあとを絶たない。
カナダを拠点に活動するアルビノの人権擁護団体「アンダー・ザ・セイム・サン(Under The Same Sun)」は、若い被害者たちを米ニューヨークに呼び寄せて支援している。エマニュエル君やムゥイングル君もここで暮らす。親元から離れ、同じ境遇の子供たちと寝食を共にし、お互いに助け合って生きることを学んでいくという。被害者のひとりであるバラカ・ルサンボー君(Baraka Lusambo)はまだ5歳。6か月前の襲撃に自分の父親が関わっていたことを知らない。
重症を負ったアルビノを支援している非営利慈善団体・グローバル医療救済基金(Global Medical Relief Fund)の創設者エリッサ・モンタンティさん(Elissa Montanti) は、「戦争をすることも、地雷で人を殺すこともそうですが、こんな残虐なことをするなんて人間は愚かな生き物です。この子たちの身体的、精神的な痛みは想像を絶するものです」と訴える。国連によると、2000年以降にタンザニアで殺害されたアルビノの数は少なくとも75人に上るという。
※ 画像はmetro.co.ukのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 A.C.)