writer : sekihara

『ニキ・ド・サンファル展』開催。大胆で力強いメッセージに触れる会場レポート。

戦後を代表する美術家のひとり、ニキ・ド・サンファル(1930-2002)の大回顧展が国立新美術館で開催中だ。今回は、モデルとして活躍したほど美しい女性であるニキが生み出した約150点の作品が展示されている。大胆で独特な色彩・手法・素材を用いた作品からは、自身や社会と闘う痛烈なメッセージや、女性のあり方や生き方への意思が感じられ、目が奪われる。

フランスで生まれ、アメリカで育ったニキがアーティストとして広く知られるようになった作品は、1961年に発表した「射撃絵画」だ。これは、絵具を入れた缶や袋をキャンバスに貼りつけて、さらにさまざまなオブジェも取り付け、一面に石膏を塗る。そして、それに向かって銃を撃つことによって完成する作品だ。作品には銃痕が見られ、そこから飛び散り、したたり落ちる絵具で石膏が染まっている。自身の作品に自ら銃を撃つアグレッシブな行為自体もパフォーマンス・アートの先駆例として高い評価を受け、ニキが美人であったことも相まって話題となった。同展に入場して真っ先に飛び込んでくるのは、ニキが銃を構え、こちらに向かって銃口を向ける映像だ。また同展では、この「射撃絵画」のパフォーマンスを人々の前で行う映像も観ることができる。

『ニキ・ド・サンファル展』より初期の「射撃絵画」の作品

2年間「射撃絵画」作品群を制作した後、ニキは、『ナナ』シリーズに代表される女性に着目した立体作品を手がけるようになる。ナナは、顔がとても小さく体は極端に大きく曲線が多用され、カラフルで大胆な色づかい。どこか古代や太古の趣や、生命の力強さも感じられる。ニキは女性の解放運動にも関心を寄せていたとされる。

『ニキ・ド・サンファル展』より『マダム(黒いバッグと緑のドレスで着飾ったナナ)』(右奥)

同展でもっとも目を惹く作品のひとつ、『ブッダ』(1999年)は、友人であり、ニキの作品のコレクターであった増田静江氏(ニキは彼女をYokoと呼んだ)に贈った作品だ。これは前年にニキが京都を訪れたことから生み出された。高さ3mもある天然石や色ガラスを多数貼りつけ、大胆な色彩で丸みを帯びたブッダは、ニキでなければ発想し得ない作品であろう。女性としてアーティストとして政治・戦争・核の脅威に考えを持ち、あらゆる宗教にも関心があったニキは、『ブッダ』のほかにも死をテーマにした作品『髑髏』(どくろ・2000年)も制作。こちらは高さ1mを超す作品で、ステンドグラス、鏡、石を多用した大変きらびやかな髑髏である。

ほかにもニキが亡くなるまで手を入れ続けた庭園『タロット・ガーデン』(イタリア・トスカーナ地方に現存)の映像やそれにまつわるドローイングなど、ニキの作品を初期の頃から晩年まで6つのコーナーから振り返ることができる。

『ニキ・ド・サンファル展』の『タロット・ガーデン』のコーナーより

専用の機器を借りて聞く音声ガイド(1台520円)では、りょう(女優・モデル)が語る解説を聞くことができる。20作品について解説しているが、ニキ自身の言葉がいくつも紹介されており、ニキの作品への理解が一層深まることだろう。

また10月29日のニキの誕生日にあわせた『ニキ・ウィーク』(10月24日~10月30日)の企画として、『ナナ』をかたどったバルーンのデザインを募集中だ。コスチュームを含めたデザインを応募、選ばれた作品が6mの巨大『ナナ』バルーンとなって国立新美術館に登場する。

■「ニキ・ド・サンファル展」 展覧会ホームページ
http://www.niki2015.jp/

■『ニキ・ド・サンファル展』開催概要
会期:2015年9月18日(金)~12月14日(月)
休館日:毎週火曜日 ただし9月22日(火)および11月3日(火)開館/11月4日(水)は休館
開館時間:午前10時~午後6時 金曜日は午後8時まで ※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 http://www.nact.jp/

(TechinsightJapan編集部 関原りあん)

『ニキ・ド・サンファル展』開催。大胆で力強いメッセージに触れる会場レポート。