日本で誕生する新生児の平均体重が、以前より軽くなっていることをご存じであろうか。出産平均年齢の上昇と母親のダイエット意識が原因であろうと言われている。だが赤ちゃんの体重が軽くなる理由のひとつに、なんと大気汚染があるという。北京の新生児の体重について驚きの発表があった。
「小さく生んで大きく育てる」とはよく聞くが、小さく誕生した赤ちゃんがその後に平均より大きな子に育った場合、成人後に糖尿病などを発症しやすいことも分かっており、母親のお腹の中で胎児をしっかりとした大きさに育てておくことが強く望まれている。そんな新生児のサイズについて今、米・環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)が発行する『環境健康展望(Environmental Health Perspectives)』誌のある記事が注目を集めている。疫学を専門とする米ニューヨーク「ロチェスター大学メディカル・センター」のデヴィッド・リッチ博士が、中国・北京市の深刻な大気汚染は誕生する新生児の大きさにも影響を与えていると発表したのである。
その根拠となったのは、2008年に開催されたオリンピックの期間中に妊娠後期であった女性たちから生まれた赤ちゃんは、2007年と2009年に生まれた赤ちゃんより平均23g重いという事実であった。世界の人々から“スモッグの町”と批判されることを嫌い、中国政府は開会の数週間前から北京市の工場に対する操業規制と自動車に対する走行規制を敷いていた。おかげでPM2.5の測定値は下がり、一酸化炭素濃度を48%、二酸化硫黄濃度を60%低下させ、青空の下でのオリンピックが実現したのである。
大気の汚染のせいで、母体の中で赤ちゃんが本来大きくなるべきサイズにまで育たない。この事実について「赤ちゃんの体重だけではありません。ヒトの体にとって大気汚染はほかにも多くの影響を与えていると考えるべきです。北京の状況を世界中の都市が同じように直面している問題だと捉えて観察することが重要です」とリッチ博士。このたびの調査対象となった新生児の数はなんと8万3000人。赤ちゃんは国にとっては次の世代を担う大切な宝物であり、その健康に影響を与えているとなれば環境問題への取り組みに人々はもっと真剣になれるはずだとまとめている。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)