農薬や化学肥料の安全性に関しては、製造および販売元、使用者、消費者で見解がしばしば大きく分かれるものだが、またしても恐ろしい発表がなされた。WHOの国際がん研究機関が、世界的に有名な除草剤「ラウンドアップ」を発がんリスク一覧表に加えたのである。
世界売り上げNo.1の信頼性、安全性も高いとされてきた除草剤の「ラウンドアップ」(米モンサント社が世界に輸出:主成分はグリホサート/glyphosate)。植物の成長のためのアミノ酸の生成を止めることで雑草を枯らす除草剤で、大変強力なため農作物まで枯れては困るとの発想から、遺伝子組み換えによる除草剤耐性作物が誕生したことは言うまでもない。「優れた生分解性のアミノ酸系除草剤で、野生生物・鳥類・昆虫類への安全性は極めて高い」と広く宣伝される一方で、こうした除草剤の大量使用は自然環境を破壊し、人体にも影響があると口にする人は少なくない。特に問題とされていたのが、ラウンドアップを多用している地域で非ホジキンリンパ腫というがんが多発していることであった。
実際にいくつかの国で使用が敬遠されるようになっていた中、世界保健機関(WHO)が管轄する「国際がん研究機関 (International Agency for Research on Cancer)」は今月20日、発がん性リスクの一覧にこのラウンドアップを加えたことを発表した。警告レベルは“probably”という言葉を用いた上から2番目に高い、グループ2Aの「ヒトに対して恐らく発がん性がある」である。また農薬ではテトラクロルビンホスとパラチオンが同じくグループ2Aに加えられ、マラチオンとダイアジノンはやや低い「発がん性の限定的な証拠がある」と示された。
米国では農家ばかりか庭の手入れとして一般家庭にもかなり普及していた「ラウンドアップ」だが、この件を受けて米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)は、今年中にもグリホサートの使用に関する規制を発表するとしている。
※ 画像はイメージです。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)