多くの女性たちを下腹部痛で苦しめ、不妊の原因としても悩ませてきた「子宮内膜症」という病気。これまで手術か内分泌療法か、それでも再発リスクありと言われてきたこの病に、やっと新たな光が見えて来た。飲み薬で治す時代まであと一歩だそうだ。
世界の主要製薬市場を結ぶ「UBM Medica Network」グループのひとつで、産婦人科における最新医療や医薬品の話題を集めている「OBGYN.net」が、「Science Translational Medicine」誌に発表された文献をもとに“子宮内膜症の飲み薬による治療法、マウス実験で効果を確認”という興味深いニュースを伝えている。
それによれば、米イリノイ大学で分子生理学の研究にあたるBenita S Katzenellenbogen博士と生物工学を専門とするJohn Katzenellenbogen博士による合同チームが、子宮内膜症の治療のために“Chloroindazole”と“Oxabicycloheptene Sulfonate”という2種類の成分を配合する新薬を開発。患部における神経や血管の新生を妨げ、内膜症による炎症を徐々に緩和、縮小させていく効果があるという。
子宮内膜症とは、子宮内膜組織が卵巣・ダクラス窩・S状結腸・直腸など異なる場所にも発生する病気で、月経周期に合わせて剥離や出血を繰り返し、体外に排出されないことからその部分に溜まり、隣接する組織との癒着を広げていく。特に卵巣に発生する「チョコレート嚢胞」に苦しむ女性は多い。鎮痛剤の服用で耐えられなくなれば、GnRHアナログ療法、ダナゾール療法、偽妊娠療法、黄体ホルモン療法といった内分泌療法、あるいは腹腔鏡か開腹による摘出手術が治療法として選択される。
ただしいずれも再発の不安があり、もっと楽で確実な治療法の出現を望む声は非常に高かった。また子宮内膜症患者の半数以上が不妊に悩む中、新薬でエストロゲンの量をコントロールすると排卵や月経が順調になり、妊娠も夢ではなくなるという。
この新薬はマウス実験でも病変組織が有意に縮小し、服薬中に妊娠した胎児にも影響がないことが確認されている。英オックスフォード大学のChristian Becker博士も、いずれ子宮内膜症は飲み薬で完治に持ち込める病になるとして、この新薬を絶賛しているもよう。さらなる研究を重ね、承認を経て数年後には医療現場に登場することが期待されている。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)