個人の意思を重んじる世界の国々においても、“安楽死”を法が認めているのはオランダ、ベルギー、スイス、オーストラリア、そしてアメリカのいくつかの州くらいなものである。ここにフランスが加わる可能性が非常に高くなってきたようだ。
フランスで安楽死を法で認めようとする動きが活発化していた中、フランソワ・オランド大統領は12日、ついに「来年1月、国会で本格的な審議に入る」と発表した。安楽死には、尊厳死とほぼ同じ意味で使われる「消極的安楽死(延命治療の終了)」と、患者の自殺願望を助ける形で薬物投与などを行う「積極的安楽死」があるが、フランスでは2005年に消極的安楽死が認められる法が施行となったものの、積極的安楽死は違法とみなされていた。
パリでは近年、高齢夫婦が病気を苦に無理心中するケースが相次いでおり、自分の死を自分で選ぶ権利を認めて欲しいと遺書で訴えて亡くなったカップルは大きな話題となった。大統領は2012年の選挙公約として積極的安楽死に関する法を整備したい考えを掲げていたが、医師会、法律、生命倫理学の専門家らで構成される諮問委員会がこの課題について常に慎重であった中、11月には脳腫瘍を患った29歳の米国のブリタニー・メイナードさんが家族に見守られながら薬物投与による安楽死を決行。世界的なニュースとなったことで、フランスでも安楽死容認派が急増していた。
具体的には、治る見込みのない耐え難い痛みに苦しむ末期がん患者や著しい神経症状に苦悶する患者に限られる安楽死だが、本人が意思表示できない場合でも、一定の条件を満たせば親・子・配偶者といった家族がそれを申し出ることも可能であることが多い。フランスの国会でどのような討論が交わされるものか、世界的な注目を集めることは間違いなさそうだ。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)