日本では「メジナ虫」とも呼ばれる「ギニアワーム」という寄生虫をご存じであろうか。このほどオーストラリア在住の男性がひょんなことで整形外科医のもとを訪ね、それを機に少なくとも4年以上前からこの虫が体内に潜んでいたことを知った。大変恐れられる寄生虫であるだけに、興味深いと話題を呼んでいる。
人体の中で生き続け、さまざまな健康被害をもたらす寄生虫。アフリカに出かけ、あるいは暮らす人であれば必ず警戒するもののひとつにスーダン、エチオピア、ガーナ、チャドなどで多く確認されている「ギニアワーム」がある。感染すれば発熱、激痛に悩まされる人が多いが、特徴的な症状を示さないまま診断が遅れるケースもあると言われる中、足の腫れにより撮影されたレントゲン写真(画像はsmh.com.auのスクリーンショット)によってその虫の存在が確認された男性がオーストラリアにいた。
スーダンからオーストラリアに4年前に移住してきたというその男性は38歳。「セントビンセント病院」の整形外科を訪ね、1年ほど前より足首から下の違和感と腫れが気になっていたことを説明し、レントゲン写真を撮影してもらったところ、写っていたのは細長く、あるいはクネクネと曲がったミミズ様のものが2本。感染症が専門のジョナサン・ダービー医師は、男性の出身地からギニアワームを強く疑ったという。「すでに虫は死んでいるため、自然退縮によりサイズもかなり小さくなっていますよ」と診断されて男性はほっとした次第だが、気づかなかった長い年月において男性の体内で栄養を横取りし、ジワジワと筋肉や内臓を傷つけながら足に移動していたことは間違いない。その後除去手術が行われ、男性は体調が良くなったという。
雄に比べて雌は体長が長く、個体によっては1メートルにも成長してしまうというギニアワーム。幼虫は水の中で生息し、その水を飲んだ人間に寄生する。1年もすると成虫になり、栄養を吸い取りながら人の体内を掘り進み、最終的には足を目指す。するとその足の皮には強い熱感をともなった水泡が生じ、人はつい足を水に突っ込みたくなるという。そこで虫は皮を破って水中に飛び出し、同時に無数の幼虫を放出し、また同じサイクルが繰り返される。WHOなどの働きかけでそうした地域には衛生的な水が供給されていることから、流行はかなりの沈静化が図られたという。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)