カンボジアで、「口唇口蓋裂」を持って誕生した女の赤ちゃん。将来を悲観して、なんと父親はその子を生きたまま墓に埋めてしまった。なんとか救出されたその命。一家に希望の光をともしたのは慈悲深いひとりの整形外科医師であった。
ヒトの口元というのは、母親のお腹の中で胎児期に口蓋突起が伸び、上あごができ、突起がくっついて、誕生する前には「くちびる」らしい形が作られていく。ところがそのプロセスが完成されぬまま縦の裂け目を伴って生まれると「口唇口蓋裂」となり、治療としては機能および審美の面から乳児期からいく度かの手術を繰り返すのが普通である。原因としては遺伝因子に妊娠中の環境要因が複雑に関与しているとの説が有力になっているが、多くは不明だという。
実は今年5月、カンボジア南東部のスヴァイリエン州にある「Svay Rieng Provincial Hospital」という病院で、Kong Put Samnangちゃんという女の赤ちゃんがその「口唇口蓋裂」を持って生まれてきた。しかし父親のKong Sokthy(29)は将来を悲観。Samnangちゃんを抱いて墓場に向かい、なんと生き埋めにしたのだ。そこで遊んでいた少年らが異変に気づいてSamnangちゃんは救出され、父親は刑務所に投獄されたが、情状酌量の余地があるとして最近になって釈放されていた。
そしてこのほど『The Phnom Penh Post』紙が伝えているところによれば、カンボジアの美容整形外科において第一人者というMok Theavy医師が、最近「Khmer-Soviet Friendship Hospital」でSamnangちゃんの口元の手術を無償で行ったという。赤ちゃんの母親であるHeng Danyさんは同紙の取材に、「主人は今ではもう娘にべったり。本当は娘をこよなく愛していたのです。娘のこの唇を整形手術で治せること自体を知りませんでした」と語り、5月に起きた愚かで忌まわしい出来事を夫婦で深く反省しているもようだ。
カンボジアで「口唇口蓋裂」は500人に1人の確率で発現しているというが、両親の心配する気持ちや金銭的負担を考え、手術は無償で提供したいと考えたTheavy医師。「実はとても簡単に治せるのです。飲食がラクになるなど術後の満足度も高く、傷もほとんど残りません」と説明している。
※ 画像はphnompenhpost.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)