シドニー西部ブルーマウンテンズで27日午前10時頃、遺体の入った棺桶が安置されていた霊柩車が、親族そして葬儀会社の職員がその場から離れていた隙に何者かによって盗まれるという事件が発生した。
事件発生当時、Tobias RichardsonさんとHayley Westさん夫妻はRichardsonさんの兄Sethさんの葬儀のため、ブルーマウンテンズにある公共施設のホールで葬儀会社の職員と話をしている最中だった。また他の職員も棺桶を運ぶための手押し車を取りに行っていたために、外に停められていた霊柩車の側には誰もいなかった。
そこへ突然、茂みの中から姿を現した1人の男性が霊柩車の運転席に飛び乗ったのだ。気づいた職員が駆けつけ、霊柩車のフロントガラスを叩き「何をやっているんだ!」と怒鳴ったものの、霊柩車はその場から走り去ってしまった。
突然発生したこの出来事に一瞬呆然としたものの、すぐ我に返ったTobiasさんは自分の車で霊柩車を追いかけた。
その後霊柩車は袋小路に入り込み、この逃走劇は実にあっけなく幕を下ろすことに。行き場を失った霊柩車の運転手はTobiasさんに引きずり降ろされ、その後受け駆けつけた警察官によって拘束された。
後の調べで、49歳のこの男性は重度の認知症のため施設にいたが、行方不明になっていたことが明らかとなった。男性は拘束後直ちに病院に搬送されたが、彼の“犯行”は一時的な思いつきによるものであり、これ以上警察の手を煩わせる事件発生の可能性は非常に低いであろうと判断されたため、お咎めは無しという結果となった。
事件発生から2時間後、Sethさんの葬儀は何の問題もなく執り行われた。TobiasさんとHayleyさんにとって今回の事件は青天の霹靂であったであろうが、亡くなったSethさんは陽気で個性的な人物であったようで、Hayleyさんも「義兄はこの事件をむしろ楽しんだのではないでしょうか」と明るく話している。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)