心身ともに弱っている高齢者にとって、伴侶の死とその葬儀、火葬、納骨といった一連の儀式は深い悲しみ、喪失感、そして強いストレスを与えるものである。これが原因で体内で免疫力が低下してしまうと、それまで健康だった人にいきなり死期が訪れることもあるというから注意が必要だ。
長年連れ添った伴侶を亡くすなどして、高齢者が肩を落とし深い悲しみにくれている姿を見るのは忍びないものがある。さらに納骨も済み、緊張や疲労から解放された後で体調不良を訴え、いつしか伴侶を追うように他界してしまう人もいる。そんな体調の異変を家族や友人は“悲しみからくる一過性のもの”と思ってしまいがちだが、高齢者に関してはその状況を軽視してはならないようだ。
悲しみやショックがあまりにも強いと高齢者では深刻な病気の発症につながることがある、との研究結果を『Immunity and Ageing』誌に発表したのは、英「バーミンガム大学」の研究チーム。65歳以上の高齢者約50名、18~45歳の成人約50名の協力を得て、悲しみやショックの場面にどれほどの免疫機能が働くかを比較する実験を行った。ストレスがホルモンバランスを崩し、自律神経系に影響を与え、ひいては免疫細胞(マクロファージ、各種リンパ球)が減ってさまざまな病気を引き起こすことはすでに知られている。加齢とともにその免疫機能が衰えていくことは仕方がないにせよ、今回の実験では、“いざ”という時に免疫機能がまるで働かない人が高齢者に多いことが分かったそうだ。
ストレスも怒り、悩み、痛み、失恋、悲しみ、競争とさまざまな原因があるが、高齢者では配偶者の死が最大の原因になるとのこと。悲しみに加え、これからは一人で生きていかなければならないという強い精神力を求められることも原因となるようだ。「配偶者の死後、1年以内に亡くなる人が本当に多くなっています。悲しみを含めた強いストレスで免疫機能が狂ってしまったために、病気をひき寄せたと考えられるでしょう」とアンナ・フィリップス博士は英メディア『Telegraph』に説明。配偶者を亡くした人に対して家族や社会は積極的なサポートを心がけ、体調を観察してあげて欲しいと強調した。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)