何名での来店かと尋ねられ、指を1本立てた途端に「おひとり様ですねー」の元気すぎる声。この瞬間がイヤで、オシャレなレストランにひとりで入ることを躊躇するという女性は多い。だが欧米ではレストランビジネス界のプロが、そんなシングル女性のニーズを見逃してはいなかったようだ。
「ハンバーガー、サンドイッチ、ドーナツなどのファストフード店は何のためらいもなく入れる。牛丼や定食のチェーン店やラーメン屋さんは他の女性客がいればOK。でも、イタリアンやフレンチのおしゃれなレストランにひとりで入るのはちょっと抵抗が。本当に入りたいのはそういうお店なのに…」。
洋の東西を問わず、これが大方のシングル女性の心境である。入りたいのに入りづらい、美味しいと評判のおしゃれなレストラン。そこは完全なるデートスポットで、テーブルのサイズも大きく、若い男女から老夫婦までロマンチックな会話がイヤでも耳に入ってくるではないか。しかし巷では確実にシングル女性の割合が増加している。そうした女性のニーズに応える形で、オランダ・アムステルダムでは今年の春、おひとり様専用レストラン「Eenmaal」が開店していた。
「大きなテーブルに通されてひとりで腰掛けるバツの悪さや、“気の毒に、ボーイフレンドがいないのね”といった偏見の目を感じることがないから、とても快適よ」とはここを訪れる客の共通した意見である。オーナーのマリーナ・ヴァン・グーアさんは「ここは期間限定のレストランですが、本格的に楽しんで頂ける4種類のコース料理を用意しています。Wi-Fiのサービスは提供していませんので雑誌や本をどうぞ」と話しており、同様の店を欧州各地に次々と開店させて行く予定だ。
同様のコンセプトでアメリカにておひとり様専用レストランの展開を推し進めているのは、フロリダ州を拠点にグローバルな活躍を続けているレストランビジネス界の大物コンサルタント、アーロン・アレン氏。全米の成人女性7人に1人がシングルという現状を積極的に、前向きに捉えたビジネスを展開すべきだとしている。またカナダ・オタワでも スティーヴン・ベクタ氏によるおひとり様専用レストランが大好評。店舗はあっという間に3つに増えたそうだ。女性のライフスタイルやニーズは時代とともに確実に変化する。女友達と集まり家庭の愚痴や上司の悪口をペチャクチャと言いながら食事をするのが好きな一方で、ひとりで静かな店に入り美味しい食事をゆっくりと。そんな感覚を味わうことも時にはよいのかもしれない。
※ 画像はbusinessweek.comのスクリーンショット。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)