思春期の頃、大切な家族、友人への表現しがたい気持ちのやり場に困って反発した記憶がある人は多いのではないだろうか。素直になれずに憎まれ口を叩いたり、相手の想いの強さをついうっとおしく思ってみたり。信じたいのに信じられなかったり、大事なものが出来たことで自分が変化することを認めたくなかったりと様々だが、そんな気持ちが高じて褒められない行動へ走ってしまった経験はないだろうか。そんな、思春期ならではのやり場のない思いや葛藤を切なく綴って一世を風靡した作品といえば、紡木たくの『ホットロード』だ。
舞台は湘南。2歳の時に父親が亡くなり、以来、母子家庭で育った少女・宮市和希。14歳のとき母親の誕生日に万引きをし、それでも自分に関心を持たない母親に孤独感を募らせ、暴走族の世界へと足を踏み入れる。そんななか出会ったのが、ガソリンスタンドでバイトをしている暴走族「NIGHTS」のメンバーでもある16歳の少年・春山洋志だった。
最初の対面で、ひょんなことから春山をひっぱたいた和希。だが最悪な印象で始まった2人の関係は、時を重ねるごとに徐々に変化していく。そして、「忘れられない女」がいるはずの春山に「彼女になれ」と言われ、戸惑いながらも和希は春山と行動を共にし始める。和希は春山が母親に似ていることに気づき、あらたな葛藤を抱えながらも春山への想いを止められず、そのことを払しょくするかのように母親に攻撃的な態度をとるように。とうとう家を出た和希は、最初は友人達の家を転々としながらもついには春山と同棲するのだが―。
思春期ならではの自分の感情に振り回される和希と春山。その後も紆余曲折を経つつ、強いきずなで結ばれるがそんな2人に大きな試練が訪れる。
1986年から『別冊マーガレット』(集英社)に連載された『ホットロード』は、当時「ヤンキー」「不良」とカテゴライズされていた若者の、純粋が故にどうにもならない気持ちを絶妙に描写し、10代女子から絶大な支持を得た。少女漫画に興味のない女子も友人・知人から借りて読むなど幅広く注目され、彼女らに大きな影響を与えた作品となったのである。
発表から30年近くを経た2014年夏には、『あまちゃん』で一躍時の人となった能年玲奈主演での映画が公開される予定となっている。是非、映画を観る前に原作をチェックし、第一話冒頭の「もう一度、あの頃のあの子たちに逢いたい」という言葉が何を意味しているのか、和希と春山の結末がどうなるのかをしっかりと自分の目で確かめてみてほしい。能年ファンの現代の若者層のみならず、当時リアルタイムでハマっていたアラサー・アラフォー女子も間違いなく注目しているであろう映画版『ホットロード』。再び旬を迎えた今、抑えておきたい作品だ。
(TechinsightJapan編集部 北島要子)