66歳の今も全力疾走で仕事を続けている映画界の巨匠スティーブン・スピルバーグ氏。米海軍特殊部隊の名狙撃手を扱った新作映画に大変な期待が寄せられていた中、同氏が降板を発表して関係者やファンを落胆させている。
巨匠スティーブン・スピルバーグ(66)が監督としてメガホンをとり、人気俳優ブラッドレイ・クーパー(38)が米海軍特殊部隊(Navy SEALs)の伝説のスナイパー(狙撃手)を演じる。そんなワクワクするような映画が作られると5月に発表されたが、スピルバーグはこのほど残念ながら降板を申し出た。
2015年の公開を目指すというその映画のタイトルは『アメリカン・スナイパー(原題:American Sniper)』。SEALsの元隊員で、史上最多の敵を倒したとされる名狙撃手クリス・カイル氏が執筆してベストセラーとなった、伝記小説『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手(原題:American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History)』を映画化するもので、脚本はジェイソン・ホールが担当。ワーナー・ブラザーズにドリームワークスが加わっての共同製作となる予定であった。
そのカイル氏は実は今年2月に死亡。奇しくも射撃場で殺されるという事件であったことから、大きな注目が集まった中で5月にプロジェクトの始動をみたが、なんとメガホンをとる予定であったスティーブン・スピルバーグが降板を決断。「彼が監督を務めるのなら」と共同製作に乗り出していただけに、ドリームワークスも当然ながら降りることになり、ワーナーは新たな監督探しに入るもようだ。
仕事の予定を変更することも多いスピルバーグ。最近ではクリス・ヘムズワースを主役に迎えるはずであったSF映画、『ロボポカリプス(原題:Robopocalypse)』が無期限延期と発表されている。そして今回の『アメリカン・スナイパー』については予算の問題という見方もあるが、彼とクーパーのコンビなら大ヒットが見込めるはず。問題はそればかりではないであろう。そこで見えて来たのは、今のスピルバーグがあまりにも多数のプロジェクトに携わり過ぎているという事実。“インターネット・ムービー・データベース(imdb.com)”の情報を見る限り、彼は尋常とは思えない数の作品を抱えており、ペンディングになっているものもある。
まずはプロデューサーまたはエグゼクティブ・プロデューサーとして、現在あるいは今後に関わる映画およびTVシリーズのプロジェクトをざっと並べてみたい。『アンダー・ザ・ドーム(原題:Under the Dome)』、『フォーリング スカイズ(原題:Falling Skies)』、『SMASH』、『タンタンの冒険3』、『Halo』、『リアル・スティール2』、『When Worlds Collide』、『タンタンの冒険2/ Prisoners of the Sun』、『ジュラシック・パーク4』、『インターステラー(原題:Interstellar)』、『The Hundred-Foot Journey』、『ロボポカリプス』、『The Talisman』、『トランスフォーマー4』。そして今回の『アメリカン・スナイパー』は降板が決まった。また監督としては、『インディ・ジョーンズ5』の制作にあたることが発表されたばかりである。
『リンカーン』の完成には11年の年月を費やしたことも分かっている。これに続くヒット作品を狙っているスピルバーグだが、この“未処理案件”の多さに、本人にも「どうしよう!」という危機感がないとは思えない。66歳にしてこの超多忙ぶりに、思わず「二兎を追う者…」という言葉がよぎってしまったのは記者だけであろうか。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)