2012年の連ドラは一昨年の『家政婦のミタ』のような爆発的ヒットこそなかったものの、趣向を凝らした作品が多かった。一方で、話題先行で放送を開始してみれば息の続かないものが多かったのも事実である。今回の【ドラマの女王】は、そんな2012年のドラマを振り返ってみたいと思う。
視聴率安泰だった月9。4クール中、2クールを嵐の松本潤、大野智、1クールを木村拓哉で占めた月9は、いずれも平均視聴率15%を超えるそこそこの成績。ジャニーズ人気、特に嵐とキムタクの強さを改めて知らしめる結果となった。唯一ジャニーズ以外の起用となった小栗旬主演の『リッチマン、プアウーマン』も平均視聴率12.4%と7月クールで2位をマークし、2013年のスペシャルドラマの放送も決定している。1月クールに放送された松本潤主演の『ラッキーセブン』も、新春にスペシャルドラマが放送されたばかりだ。他にジャニーズの主演でのヒットと言えば、中居正広主演の日曜劇場『ATARU』だろう。こちらも15%台をマークし、スペシャルドラマの放送が決まっている。いずれも手堅いキャストでしっかりと結果を残した。
フジテレビ系の木曜22時枠は、大人の女性をターゲットにしたものが多かった。天海祐希が『カエルの王女さま』『結婚しない』の2クールで主演するなど『BOSS』人気を引きずるようなキャスティングだったが、いずれも視聴率はなかなかの成績。ふたつのドラマは全く違う女性像だが、どちらも天海のキャラクターとマッチして見ていて気持ちが良かった。特に『結婚しない』では菅野美穂とのやりとりが妙にリアルで、現代女性の「今」を見事に演じていた。
1月クールに放送された小泉今日子主演の『最後から二番目の恋』。こちらも40代女性の恋愛観をゆったりとしたペースでありながらも、同世代の心を見事に掴んだ。
恋愛観といえば、『結婚しない』もそうだが2011年に放送された『私が恋愛できない理由』や12月17日~19日の深夜に放送された日テレ系の『ピン女のメリークリスマス』など、「恋から遠のいている女性が恋愛するまで」を描くものが増えている。恋愛なしでも満たされてしまう現代社会の象徴か。これまでは一念発起した女性の奮闘ぶりをコミカルに描くものが多かったが、「今のままでもいいではないか」という等身大の女性の姿が支持されたようだ。
現実世界の独身アラサー、独身アラフォーの女性たちは、年齢を重ねるごとに恋愛以外に浮上する様々な悩みを抱えている。これは同世代でも結婚してしまった女性には分からないし、ましてや20代には想像すら出来ない悩みだ。同世代のおひとりさま男性には分かるのかといえば、そこも微妙。おひとりさま女性の気持ちを分かってくれるのはおひとりさま女性だけ。『結婚しない』は、そんな悩める独女の気持ちと現実をとても分かりやすく代弁してくれたように思う。彼女たちが「老後」「親の介護」「仕事」「保険」「家」などの問題をひとりで抱えていることを、どれだけの人が知っているだろう。どこか男性目線で「結婚してしまえばいいじゃないか」「理想を追い過ぎなんだ」と簡単に流されてしまうことが多い。ただ結婚しないのではない。理想ばかり追っているわけでもない。彼女たちは常に考え、日々に追われている。
一方、恋愛相手を見つける奮闘ぶりをコミカルに現代風に描いたのは『ピン女のメリークリスマス』だ。メールアドレス変更のお知らせで今は連絡を取っていない男性と再会するきっかけを作ったりSNSを駆使してみるなど、現代の恋愛事情がリアルに描かれていた。演じる貫地谷しほりの悪戦苦闘ぶりにも好感が持てた。
現代女性をよりリアルに描くことで視聴率アップに繋がった2012年。ドラマをあまり見なくなってしまったおひとりさま世代の女性に、いかにリアルを感じてもらうかが成功の鍵だったのかもしれない。2013年も彼女たちにアプローチするドラマを期待したい。ちなみに『結婚しない』は、ドラマの脚本の監修を務めた「恋愛学」を研究する森川友義教授がプロデュースする街コンが1月に開催されるなどまだまだ話題となりそうだ。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)