ハリウッド女優にして、パリの上流社交界を生きる超セレブ妻。“不法入国してハリウッドにたどり着いたメキシカン”というのは、あまりにも辛い前身か。女優サルマ・ハエックはそうした記憶を闇に葬ってしまったようだ。
女優サルマ・ハエックは、フランスの超リッチな実業家フランソワ=アンリ・ピノー氏と2009年に結婚し、流暢な英語と仏語でパリおよびファッション界の“超上流”の人々と交流しながら、一人娘のヴァレンティナちゃんをパリの名門私立に通わせている超玉の輿婚のセレブ妻。このほど独版『Vogue』誌とのインタビューに応じたが、彼女には“メキシカン”の自覚や誇りは無いようだ。
カリフォルニアの大麻の売買にメキシコの麻薬密売組織が絡み、誘拐事件が起きるというオリヴァー・ストーン監督の最新クライム・サスペンス映画『Savages』では、女優ブレイク・ライブリーと共演したハエック。そこで彼女は初めてメキシコ人を演じたとして、こう語っている。
「素晴らしい作品、共演者に出会えて本当に誇らしく思っているわ。でも正直なところ戸惑ったわ。私にはメキシカンとしての記憶はほとんど残っていないんだもの。今の私の暮らしはあの頃とは転地の差。娘ヴァレンティナの存在、そして夫に心から感謝しているわ。」
「私たちメキシカンは確かに問題をいっぱい抱えているし、それをしっかりと話し合っていかなければならないわ。メキシコ内の問題だと言いながら、米国は一生懸命関わってくる。ここ数年の麻薬戦争では、3万人以上のメキシカンが米国の兵士により殺されたのよ。」
「素晴らしい夫に巡り合える確率を考えたら、オスカー像を握りしめる方がよほど簡単よ。最も稼ぐトップ女優の仲間入りが見えてきても、キャリアを無我夢中で模索するなんて今の私にはどうでもいいこと。」
このインタビュー、当然ながらラテンの人々の間で「サルマも私たちと同じなのに、玉の輿にのったらずいぶんエラくなったものだ」と大変な物議を醸している。何しろ彼女は米国の陸軍がそれほど国境警備を厳しくしていなかった1990年にLAに渡ったらしく、2年前に「私だってメキシコからの不法入国者よ。『デスペラード』でアントニオ・バンデラスの相手役を得たけれど、ハリウッドの人種差別はひどかった」と激白していたのだ。
家族と手をつないで夜中に国境をまたいだ忌まわしい思い出、ハリウッドでの屈辱的で苦しい日々を、彼女はきっと忘れたいのであろう。上流社交界に生きていれば、“メキシカンであることを誇りに思え”と言われても難しい時もあるはずだ。人には「それをバネにして生きよう」と励みにすることのできる辛い思い出と、できることなら闇に葬りたい、どうにも苦しい思い出とがあるものだ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)