NHKのドラマ10『はつ恋』が回を増すごとに切なく、大人の色香を放っている。それに伴ってか視聴率も上がり続けているのだ。
初恋の相手と思わぬ再会をした、言語聴覚士の村上緑(木村佳乃)とその夫・潤(青木崇高)。緑の初恋の相手である医師の三島匡(伊原剛志)の環境は大きく変わっていた。三島が脳出血で倒れ、その後遺症で失語症になってしまった。緑はかつての三島のパートナー・蛯名幸絵(佐藤江梨子)から三島のリハビリを頼まれる。そして過去の誤解をつたない言葉で解くにつれ、緑と三島は一線を越えてしまう。
そんな緑の動きに不安を隠せないのが潤だ。初期の段階から彼はそうなるんだろうと分かっていたのに、あまりにもその通り過ぎて泣けてくる。近くにいるからこそ、相手の気持ちの些細な変化に気付いてしまう。そして、怖くてそれを確認することが出来ない。そんな潤の姿には胸を締め付けられる。恋敵である三島も、ずっと忘れられなかった初恋の人が今や人妻であり、やり場のない気持ちを持て余す。
ちょうど第7回の放送前に武井咲主演の『息もできない夏』(フジテレビ系)がスタートした。そこでも木村は母親役を演じているのだが、こちらでも2人の男の間に揺れていた過去がありそうだ。職業も医療関係のようなので、ますます緑とだぶるところがある。今まで彼女に恋愛に従順のような雰囲気を感じたことがなかったのだが、今は違和感なく見ることが出来る。結婚、出産を経て、女の色気のようなものが出てきたのだろうか。それほど、緑と三島の分かり合うシーンはきれいだと感じることが出来た。他のドラマでは見ることの出来ない空気、色、そして息づかいを感じられた。これは若手俳優ばかり出演しているドラマに慣れてきている我々に、演技とはこうなんだと思い出させてくれた瞬間でもあった。
ストーリーもそうだが、役者の演技も大事だ。もちろん若手メインで作ることも大事である。しかし、こういう質のいいものがなければレベルは下がる一方。一流を知るからものの良さが分かる。俳優を売り出すためのドラマではなく、視聴者の目の肥やしになるドラマを作らないことが、ドラマ離れが止まらない要因の一つであることも知ってもらいたい。ドラマが良ければ視聴率は上がる。それは昔から分かっていたことだが、今回このドラマは改めて、話題性だけでなくても視聴者はついてくるということを証明してくれたのではないだろうか。
来週、『はつ恋』はついに最終回を迎える。緑は一体どのような結論を出すのか、三島と潤はどのような動きを見せるのか。それぞれの感情の動きも目が離せない。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)