少し前になってしまうが去る3月28日、29日に放送されたAKB48の秋元才加初主演の『朝ドラ殺人事件』(NHK)が面白い趣向を凝らしていた。
先月、レギュラー出演していた『笑っていいとも!』を卒業した秋元。バラエティ番組でAKB48のメンバーと高飛び対決で秋元の勇姿を見て以来「この子根性あるなぁ」と、一目置いていた。そんな彼女のドラマ初主演がNHKとは、なかなかの快挙ではないだろうか。これまではAKB48メンバー出演の『マジすか学園』や『名探偵コナン 工藤新一への挑戦状』など、素直に女優としての力量を見ることが出来ないドラマが多かった。それだけに今回、秋元が今までとは違う等身大の女性をどのように演じるのか楽しみだった。
ただ、このドラマ「朝ドラ殺人事件」と称しているにもかかわらず、殺人事件など起こらない。起きた事件はダルマの幽霊が出現し、撮影の邪魔をするという。なぜそのタイトルを付けたのかと問いたくなるチグハグした内容だったのだ。
NHKの朝ドラのAP(アシスタントプロデューサー)である新見美穂(秋元)は、30歳で若くしてプロデューサーになった岩岸佳代子(国生さゆり)に憧れて、30歳までにプロデューサーになるために頑張っている。そんなある日、撮影セットに巨大なダルマの幽霊(六角精児)が出現する。そのダルマは力尽くでどかすことは出来ない。そこで、新見はダルマ処理係として任命されることになる。しかし、初めて遭遇するダルマの幽霊に半信半疑。加えて、他人に頼ろうとしない性格が災いし、ダルマが増える始末。タイムリミットは翌日の昼。新見は無事、ダルマを消すことが出来るのか。
本当にタイトルが悔やまれるドラマである。秋元の演技はアイドルらしさを感じさせずなかなかの出来。アイドルの先輩でもある国生とならんでも引けを取らない。先日AKB48の卒業を発表した前田敦子の演技より断然良かった。妙にアイドルっぽさを求められることもないため、その素質が見えた気がする。そういう意味でも作品に恵まれていたのかもしれない。
だからこそ「殺人事件」と付いてしまったことが悔やまれる。「殺人事件」とあるために、ミステリー要素を期待していた視聴者も多かっただろう。なぜこのタイトルにしてしまったのか、それは最後まで見ていても分からなかった。
そんな残念な部分もあるこのドラマだが、地デジ化の醍醐味であるデータ放送を利用するという新しい試みをしていたことは大きかった。データ放送は、バラエティ番組の投票などで見られ「Aだと思う人は赤いボタン、Bだと思う人は黄色のボタンを押して下さい」と言われる場面に遭遇したことがある人も多いだろう。このドラマはそれを活用していた。ドラマ内の随所で「何色のボタンを押すと新見の考えていることが見られます」など誘導されるのだ。あいにく、記者は本筋のみしか見ることが出来なかったので、他のパターンは分からない。こういったスタイルが他のドラマでも定番化したら面白そうだが、別パターンで見てしまった場合、本筋を見ることが出来なくなってしまうかもしれない。それに録画しても、このシステムは対応されるのか。その辺りがとても気になる。
そんな、気になることを確認する機会があるのだ。4月9日と4月16日に再放送されることが決まった。見逃してしまった人は、ぜひこの機会に確認してみてはいかがだろうか。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)