ややもすれば若くセクシーな女優ばかりが主役級としてレッドカーペットを闊歩する現在のハリウッドで、60歳を超えてもなお第一線を走り続ける女優、それがメリル・ストリープだ。『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で見事自身3度目となるアカデミー賞を受賞したストリープがオスカーの興奮も冷めやらぬなかフィリダ・ロイド監督(54)とともに来日、7日都内ホテルで記者会見を行った。
予定開始時刻とほぼ同時にあのチャーミングな笑顔を満面に湛え会場に姿を現したストリープに、集まった人々からは感嘆と“親しみ”の歓声が上がった。黒のシンプルなコートに身を包んだストリープは冒頭笑顔であいさつをし、本作『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』の制作秘話について語った。
今回何よりも苦労したのはやはり役作りであったという。自らを「outsider(アウトサイダー)」と呼び、米国人である自分が英国の元首相を演じることの難しさを表現した。また実在の人物であり、多くの人がいまだその人生に関心を持つサッチャー元首相である。演じる自分の責任は重いとし、いかにしてその真実の姿に近づけるかを強く意識したという。実際にサッチャー元首相の“味方”であった人物、“敵”であった人物もアドバイザーとして制作に参加したことを明かした。
サッチャー元首相のどこに魅力を感じるかという質問に対しては、「(サッチャー元首相は)涙を見せず、男社会にあっても“女の弱さ”を見せなかった。けれども、同時にハンドバッグを愛し、フリルのついたブラウスを着て、“女らしさ”は捨てない。そこが素晴らしいところ。」と賞賛した。肝心の映画のストーリーに関しては「けして成功者の物語ではない」とし、サッチャー元首相の政治家としてだけではない、妻として母として、そして現在認知症を患い晩年を迎えている彼女の回顧録として人間味あふれる作品に仕上がっていることを強調した。
会見は終始ストリープの笑顔とユーモア溢れるやりとりのなか行われた一方、東日本大震災で被災した人々に心を痛めていること、またすぐにでも何度でも日本を訪れたいという言葉でしめくくられた。最後には「マンマ・ミーア!」以来、盟友ともいえるフィリダ・ロイド監督と笑顔で映画のヒットを祈願し、鏡開きを行った。
古くは「クレイマー、クレイマー」から「マディソン郡の橋」「マンマ・ミーア!」そして第84回アカデミー主演女優賞を受賞した『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』まで。およそ35年に渡り、その時々の自らの魅力を最大限に発揮できる役柄を選んできた。幅広い世代の人々が彼女に“親しみ”を感じるのはそのためではないか。サッチャー元首相と同じく、女優としてだけでなく妻として4人の子を持つ母としての顔も持つメリル・ストリープ。情報過多のハリウッドにおいて、プライベートをうかがい知ることの難しい稀有な存在の名女優が今回の来日会見でその素顔の一端を垣間見せてくれた。
映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』は3月16日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。
(TechinsightJapan編集部 村上あい)