NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』ですっかり良妻賢母のイメージが板に付いた松下奈緒が、今度は一転して世間知らずで家事の出来ない主婦を演じている。そんな松下主演の『早海さんと呼ばれる日』(フジテレビ系)は、初回こそ視聴率10%を切ったものの、それ以降は毎週10%と安定している。フジテレビの日曜9時枠では『マルモのおきて』に次ぐ視聴率だ。
お嬢様育ちの金井優梨子(松下)が4人兄弟の長男・早海恭一(井ノ原快彦・V6)の嫁として嫁ぐところから物語は始まる。当初夫婦は別に新居を構えるも、恭一の母親の突然の家出を機に優梨子は早海家の嫁として一緒に暮らすことになる。お嬢様で家事など一切経験のない優梨子は失敗の連続。それでも早海家の嫁として認められようと奔走する姿が描かれている。
はじめこそ、優梨子の世間知らずぶりにイラっとさせられたものだったが、徐々に問題が優梨子から兄弟へと移行するにつれ、松下の“ゲゲゲの女房ぶり”が発揮されていく。
自分たちは何もせず、全てを優梨子に任せているにもかかわらず、文句を言う早海家の面々に怒りが込み上げてくる。これでは、母親が家出するというとんでもない設定もうなずけてしまう。それでいて、優梨子が個人の問題に首を突っ込もうとすれば「あんたには関係ない」と突っぱねる。いくら長男の嫁とはいえ、ここまでさせるとは…。イマドキ珍しい設定である。
そんな早海家は、大黒柱・恵太郎には船越英一郎、長男・恭一に井ノ原、次男・研二に要潤、三男・馨に中丸雄一(KAT-TUN)、四男・優三を森永悠希が演じるという、なかなかイケメン揃いの一家である。しかしそんなイケメン集団に反し、恭一以外は昭和丸出しの亭主関白な家庭だ。昭和の名作『寺内貫太郎一家』を彷彿とさせるものがある。
愛妻家で知られる船越の頑固親父ぶりに違和感を覚えるものの、その化石のような性質はしっかり次男に受け継がれ、食事中に取っ組み合いの喧嘩をするなど、まさに昭和の名シーンが再現されている。そんな時代錯誤しているような設定にもかかわらず、安定した視聴率を獲得しているのは、どこか懐かしさを感じるからだろうか。家庭は昭和のにおいがぷんぷんしているが、各々が抱える悩みは現代に直結しているものが多い。それを現代ではあまり見ることのない、家族全員がぶつかり合って一緒に解決していく姿に何かしらの魅力を感じる人が多いのではないだろうか。
なんだかんだ言って、何かあれば全員揃って家族会議を開く早海家。最近ではそんな話はあまり聞かない。当人と両親ならまだしも、兄弟全員しかも兄嫁まで交えるなど尚更だ。家族の誰かが困っているなら家族全員で解決する。簡単なはずのことが、今は難しい。そんなところに視聴者は憧れを抱いているのかもしれない。
一見騒がしいだけのようにも見えるドラマだが、一つ一つの問題はとても丁寧に描かれており、納得のいく作りになっている。この丁寧な作りも飽きさせない要因なのかもしれない。
次回、高校の同級生が研二の子どもを産んでいた事実を知った早海家の面々。それに加え、家出していた母親と思春期まっただ中の優三が再会するなどもうひと騒動待っていそうだ。果たして、優梨子によって早海家の男性陣がどのように成長していくのか。回を重ねるごとに松下の姿が“ゲゲゲの女房”のそれと重なって見える感じが否めないのだが、それも優梨子が「早海さんと呼ばれる日」までは目をつむっておこうと思う。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)