榮倉奈々と菅野美穂がW主演している木曜22時『蜜の味~A Taste Of Honey~』(フジテレビ系)が陰ながら安定した視聴率を保っている。
森本直子(榮倉)は幼いころから好きだった叔父・池澤雅人(ARATA)を追いかけて、東京の医大へ入学する。そこで初めて、雅人に原田彩(菅野)という恋人がいることを知る。直子は彩が雅人を幸せに出来ないと思うも、二人の結婚が決まってしまう。それでも諦めきれない直子と、結婚してからどこかぎくしゃくし始める雅人と彩の三角関係だ。
結婚した時点で結論が出るのではなく、全てが始まる。若さゆえどうすれば良いのか分からずただ想うしか出来ない純朴さと、何一つ不自由することなく順調に生きてきた女性の初めての挫折に畏怖する二人の女性が、一人の男を巡って繰り広げる泥沼劇である。
純粋に好きな人を追いかける直子と、自分より劣っているものに負けることが許せない彩の相反する二人の抗争はまさに女の闘いだ。直接やり合うシーンは少なく、水面下での心理戦が中心である。そしてこの心理戦が巧みで怖い。優位に立ちたい彩が直子に仕掛けることが主だが、これも何も知らない人には分からないように巧妙に攻める。それを分かっている直子が彩にビクビクしながらも、しっかりと立ち向かっていく姿に毎回ヒヤヒヤしてしまう。
そしてこの二人の間に挟まれる雅人がどれだけ情けない優柔不断な男なのかと思えば、こちらもしっかり自分の意志を持った男だから驚くのだ。直子に対する感情は読めない部分も多いが、彩にはしっかり三行半をつきつけている。男が二人の女の間をうろうろすることはなく、三人がそれぞれ何かと闘っている不思議な三角関係である。しかしその関係もいつかは崩れる。それが崩れたとき、また大きく物語はうねるのだろう。次回あたり大きくうねりそうなので、見逃せないところだ。
榮倉は2010年の『泣かないと決めた日』以来のドラマ主演だ。『泣かないと決めた日』に続き、今回もいじめられ役だ。彩に追い込まれる姿を見ると、いじめたくなるのが分かる気がするくらいいじめられ役が妙に板についてきたように思う。今回は『蜜の味』というタイトルに加えドロドロの三角関係ということで、濃厚なシーンも多少ある。そんな大人な恋愛に割り込むには、榮倉は幼く見えたのだが、女優としても経験豊富な菅野と対照的な存在としては見た目的にももってこいだ。
物語は8年を経て、直子は同期の則杉康志(溝端淳平)と一緒に暮らす。8年後の直子の姿が8年前より成長しているのが、目に見えるから見上げたものだ。ただ髪の長さが変わっただけの変化ではなく、しっかり中から醸し出される変化も演じられている。そんな榮倉の演技力の幅を見ることが出来て驚いた。完成された菅野の演技に対し、女優としてもあどけなさの残る榮倉が、これから彩との直接対決でどのような女を魅せるのか楽しみである。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)