『バーテンダー』『犬を飼うということ～スカイと我が家の180日～』などジャニーズが続いたテレビ朝日系の金曜ナイトドラマだが、今クールは一転して黒木メイサと多部未華子という異色コンビで本格的ミステリー『ジウ 警視庁特殊犯捜査係』を放送している。

誘拐や立てこもり事件などを扱う警視庁刑事部捜査一課特殊犯捜査第二係（通称SIT）に所属する伊崎基子（黒木）と門倉美咲（多部）は、相反する性格の二人。基子は己の力のみしか信じられない戦闘力の高い野心家。美咲は刑事には見えない風貌と心優しい考えの持ち主である。ある人質立てこもり事件を機に基子はSAT（特殊急襲部隊）への入隊を打診され、美咲は柿の木坂署へ異動することになる。そこで新たに誘拐事件が発生する。しかし、それは二人が異動するきっかけとなった立てこもり事件とそれ以前に発生した誘拐事件とも繋がっていたのだった。原作は誉田哲也の同名小説である。

一見、黒木と多部ががっつりタッグを組んで事件を解決していくのかと思いきや、二人が顔を合わせるのは一回の放送で数分あるかないか。二人が全く違う形で事件と関わっていくという相棒ものとは少し違うテイストだ。

多部は以前『デカワンコ』で刑事役を経験しているとはいえ、今作とは設定が違いすぎる。このような本格的な刑事ものの主演となると頼りない。それは黒木にも言える。基子のストイックなところは悪くはないのだが、彼女にも多部と同じような頼りなさを感じる。どうしても彼女たちが主演としてこのドラマを引っぱっているようには見えないのだ。主演としての存在感はあるのだが、刑事とは遠いところにいるように感じる。それはあまりドラマでは見られない特殊部隊に所属しているからなのだろうか。

ドラマの中でも実写化は特に主要人物の配役、演技によりドラマの印象が左右されやすいものだ。しかし、このドラマはそんな彼女たちの印象など吹き飛ばしてしまうほどストーリー自体が強烈な力を持っている。それは演出にも言える。「対照的な二人」を象徴するかのように、ひたすら無愛想な黒木と困り顔の多部。それは表情だけでなく、黒木は黒い服、多部には白い服を多用していることからもうかがうことが出来る。このような細かい演出は他の登場人物にも当てはまり、ドラマの世界観を見事に作り上げている。これは原作の段階からしっかりとした作りになっているからこそ為せるのだろう。決して早い展開ではないが、着々と忍び寄る真犯人との距離感に緊張が走る。その緊迫した空気が上手く表されている。そして、視聴者をぐっと掴んで引き込んでしまうのだ。今後の展開が気になるばかりである。

あとは、このまま彼女たちが脚本や演出に救われてばかりで終わってしまわないことを願うばかりだ。事件の結末には希望があるとは思えないのだが、このドラマのテーマは「愛」らしい。一体最後にどのような「愛」を示すのだろうか。それは彼女たちの今後とともに見届けたいと思う。
（TechinsightJapan編集部 洋梨りんご）