今年も夏の風物詩である24時間テレビ「愛は地球を救う」(日テレ系)が終了した。今年はジャニーズの中でも異色とされるグループ関ジャニ∞がメインパーソナリティを務めた。番組内で放送された24時間テレビ34スペシャルドラマ『生きてるだけでなんくるないさ』も同グループのメンバー村上信五が主演した。
今年のドラマは何事にも飽きやすく、本気で取り組むことをしない、高校もすぐに中退、仕事も1年と続かないで暮らしていた石嶺栄作(村上)が数十万人に一人と言われる重い病気と幾度となく闘い、大切な人、生きる意味を見つける、実話を元にしたフィクションだ。栄作の高校時代からの彼女・美香役に田中麗奈、親友・木下大輔役に渋谷すばる(関ジャニ∞)、その他の関ジャニ∞のメンバーも同級生役として友情出演した。関ジャニ∞のメンバーが全員でドラマ出演するのは初めてのことだったようだ。
メンバー内でもドラマ経験の多い錦戸亮や大倉忠義を起用せず、あえてドラマ出演のイメージがない村上を選んだのは正解だったように感じた。そんな彼だったからこそ、栄作という人物に変なイメージを持つことなく見ることが出来た。これが錦戸や大倉であったら、直近のドラマの印象が強く、話の内容に重きをおけなかったと思う。他にもドラマ出演が少ないメンバーはいるが、今春から同局の『ヒルナンデス』でレギュラー出演している村上は同局となじみがあったことも大きいだろう。
一方、田中の献身的に看病する姿も凛としていて気持ちよかった。はじめは、彼女より友達優先、彼女に優しい言葉もかけない、しまいには仕事も続かない典型的なダメ男である栄作を「照れ屋だから」「本当は優しい人なの」と、かばい続ける姿に、なっちゃんがそんな男に引っかかるなんて許せない!とつい違う目線になってしまった。それでも、重い病と闘う彼をひたすら看病する様子は、美香自身と田中の凛とした顔立ちがマッチし、この子だから出来ることなのだと頷けたのだった。
他にも栄作の母親役の高畑淳子の厚かましい母親ぶりと、生きる意味について考えるきっかけを与えた栄作の主治医役の生瀬勝久が久しぶりに見せるシリアスな表情にぴんと背筋が伸びる気分にさせられるなど、正反対ながらもドラマのアクセントとなっていた。
病気のことを除けば、ただのダメ男とそれにハマる女性の話なのである。24時間テレビ内のドラマという先入観があったためか、そのことを感じることはあまりなかった。しかし、それ以上に同じ人間が重い病に何度も蝕まれること、それでも克服出来ること、家族、友人の存在の大きさを知ることが出来た。だからこそ、もう少し「生きてるだけでなんくるないさ(生きてるだけでなんとかなるさ)」という言葉を終盤にも取り上げて欲しかった。最後、生きる理由を見つけた栄作と美香がその言葉を噛み締めると思っていたために、拍子抜けしてしまった。タイトルにもなっているのだから、もう少し大切に扱ってもらいたかった。
だが、それでもこのドラマは「生きてるだけでなんくるないさ」その意味と自分が生きる理由を少し考えてみるきっかけになったのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)